【5月30日 AFP】サウジアラビアを中心に世界で27人の死者が出ている新型コロナウイルスの潜伏期間は、これまで考えられていたよりも長く、より長期の隔離が必要である可能性があるとする研究結果が29日、英医学専門誌「ランセット(Lancet)」で発表された。

 研究によると、この「中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory SyndromeMERS)コロナウイルス」は、感染から発症までの潜伏期間が、これまで観察された1~9日よりも長い9~12日である可能性があるという。

 この発見は、患者との「接触による感染を防ぐための隔離期間について重要な意味」を持つと、研究チームは述べている。チームは、中東から戻った人に呼吸疾患がみられる場合、またはMERSウイルス感染が確認された患者に接触した場合は、隔離が必要であり、少なくとも12日間隔離して感染の有無を確認するよう勧告している。

 今回の研究では、フランス人のMERS患者2人が対象となった。うち、すでに死亡した1人はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)を旅行中に感染したとみられ、もう1人はその患者と病室を共にしたことにより感染したと考えられている。

 世界保健機関(World Health OrganisationWHO)は29日、MERSウイルスによる死者はサウジアラビアで3人、フランスで1人増え、計27人に上ったと発表している。

 MERSは、2003年にアジアで動物から人間にうつり、約800人が死亡して世界的な健康不安を生んだSARSSevere Acute Respiratory Syndrome、重症急性呼吸器症候群)と類似した病気。MERSウイルスはSARSと同じく発熱、せき、呼吸困難といった症状を生む肺感染症を引き起こすとみられているが、急速な腎不全を起こす点でSARSと異なっている。

 保健当局はMERSウイルスの約50%という高い死亡率に対する懸念を示してきており、人間の間で簡単に広がる能力を持つようになれば新たな危機を引き起こしかねないと警告している。(c)AFP