【5月22日 AFP】研究室で培養した結核菌を、ビタミンCを使って殺傷することに成功したとする米研究チームの研究論文が21日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)で発表された。この「予想外」の発見は、より効果が高く安価な薬の開発につながる可能性があるという。

 米アルバート・アインシュタイン医科大(Albert Einstein College of Medicine)の研究チームは、結核菌がどのようにして抗結核薬イソニアジド(isoniazid)への耐性を持つようになるかを研究中に、偶然これを発見した。

 研究チームは、試験管内の結核菌にイソニアジドと、還元剤のシステイン(cysteine)を加えた。チームは、結核菌が耐薬性を持つようになるだろうと予想していたが、論文の主執筆者、ウィリアム・ジェイコブズ(William Jacobs)氏によると、菌は全滅。これは「完全に予想外」だったという。

 そこで、実験で使用したシステインを、別の還元剤であるビタミンCに代えたところ、結核菌は同じく死滅した。「信じられなかった」とジェイコブズ氏。「さらに驚くべきことに、抗結核薬のイソニアジドを除外して、ビタミンCだけにしたところ、ビタミンCが結核菌を殺傷することを発見した」

 次に、耐薬性を持つ型の結核菌に対するビタミンCの効果を試したところ、同じ結果が得られた。実験室のテストでは、結核菌にビタミンCへの耐性が生じることはなかった。ジェイコブズ氏は大学が公開した動画の中で「まるで夢の薬のようだ」と述べている。

 同氏は一方で、この効果は今のところ試験管の中でしか実証されておらず、「ヒトで有効に機能するかどうかは分かっていない」と強調。また、用量によって有用性が変わるかも不明という。「だがこの研究以前は、これをヒトで試してみようなどとは思いもしなかっただろう」

 2011年の結核症例約1200万件のうち、最も有効な抗結核薬のイソニアジドとリファンピン(rifampin)が効かない「多剤耐性結核(MDR-TB)」は約63万件とみられている。この他、耐薬性の範囲がさらに広い「超多剤耐性結核(XDR-TB)」も存在する。

 米国でのMDR-TBの治療費は、患者1人当たり25万ドル(約2600万円)に達する場合もある。XDR-TBの治療には、約2年の治療期間とさらに高価な薬剤が必要な上、これら薬剤には副作用があり、治癒の保証はない。

 研究チームは、ビタミンCが「安価で、広く入手可能であり、非常に安全に使用できる」ことを強調。結核の治療にビタミンCを使用する可能性に関してさらなる研究が必要と呼び掛けた。

 ジェイコブズ氏は「特効薬がない型の結核が存在するので、これは検討すべき優れた研究になるだろう。このような型の結核菌をビタミンCで殺傷できることは、実験室では分かっている」と述べている。(c)AFP