【11月15日 AFP】街中に生息するバッタは、道路を行き交う自動車の騒音にかき消されないよう鳴き声を変えていることが、このほどドイツの研究チームによって解明された。

 中欧に広く生息するヒナバッタ(学名:Chorthippus biguttulus)の雄は、交尾相手を引き付けるため後脚のやすり状の部分と羽の翅脈(しみゃく)をこすり合わせ、鳴き声を発する。ところが、通常の鳴き声は交通量の多い道路沿いでは騒音に負けてしまう。そこで道路沿いに生息するヒナバッタの雄は、騒音の中でも雌に聞こえるように低音部を増幅させた鳴き声を発しているのだという。

 独ビーレフェルト大学(Bielefeld University)のウルリケ・ランペ(Ulrike Lampe)氏の研究チームは、静かな場所と交通量の多い道路沿いから半数ずつ雄のヒナバッタ188匹を採集。雌のヒナバッタの近くに置き、個々の鳴き声を1000回近く録音・分析した。

 すると「騒音の多い場所にすむヒナバッタの鳴き声は、低周波帯の音量が大きかった」(ランペ氏)という。ランペ氏は、道路の騒音によって聞こえにくくなる低音部の音量を大きくするのは理にかなっていると述べている。

 人間が作り出した騒音に合わせて動物が鳴き声を変える例としては鳥やクジラ、カエルなどが知られているが、昆虫で確認されたのは今回が初めて。この研究結果は、英生態学会(British Ecological Society)発行の科学誌「ファンクショナル・エコロジー(Functional Ecology)」に発表されている。(c)AFP