【7月31日 AFP】地球温暖化の原因となっている二酸化炭素(CO2)が南極海(Southern Ocean)の深海に蓄積されるメカニズムを解明したと、英豪の共同研究チームが29日、発表した。風と渦、海流の働きが重なって、CO2を吸収し深海へと閉じ込める漏斗(ろうと)状の水の流れが生まれているのだという。

 地球上のCO2の約4分の1は海中に吸収・隔離されているが、その約40%は南極海に集中している。水深約1000メートル付近に数百年~数千年にわたって閉じ込められているとされるものの、CO2がどのようにして深海にたまっていくのかは究明されていなかった。

 これまでは風がCO2の溶け込んだ表層海水を一定海域に集め、深海へと降下させているのではないかと考えられてきたが、今回研究チームは小型の深海探査ロボットを使って収集した10年分のデータから、風に加えて平均直径およそ100キロに及ぶ巨大な「渦」も要因の1つであることを見出した。

 論文を執筆したジャンバプティスト・サレ(Jean-Baptiste Sallee)氏はAFPの取材に対し、「渦と風、さらに南極海の主要な海流の3つの影響が重なり、海水の表面から海中にCO2を取り込む幅1000キロもの下降水流が生じている」と説明した。こうした下降水流は、南極海の5か所にあるという。

 強い風には海を激しくかき混ぜ、海中に隔離されているCO2を大気中に解き放ってしまう効果もあるが、今回発見した渦がこの影響を打ち消す役割を果たしていることも分かった。サレ氏は、「このこと自体は朗報に聞こえるが、問題はこれらの渦に対する温暖化の影響だ。渦は止まってしまうのか、それとも強化されるのか、全く不明だ」と述べている。

 理論上は、気候変動によって海流が変化したり風が強くなったり、気温が急上昇したりした場合、南極海の渦の性質や働きも影響され得る。

 いずれにせよ今回の発見で、現在の気候変動モデルには組み込まれていないこの渦の存在を、今後は考慮に入れる必要があることが示されたとサレ氏は語る。今回の研究では南緯35度以南の南極海が対象だったため、他の海域にもこのメカニズムが適用できるかは分からないが、南極海は「地球上で最も活発な海の1つ」であり、そこに存在する渦の影響は他のどの海よりも大きいだろうと、同氏は指摘している。(c)AFP