【8月23日 AFP】オーストラリアの警察および福祉当局は23日、生後2日の息子がB型肝炎の予防接種を強制的に受けさせられるのを拒否し、息子ともども身を隠した夫婦を捜索していることを明らかにした。

 子どもの父親がシドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)紙に語ったところによると、子どもはシドニー(Sydney)の病院で誕生したが、父親と中国系の母親がこの息子にB型肝炎の予防接種を受けさせることを拒否。福祉当局からの申告を受けた州最高裁が両親に予防接種を受けさせるよう命令したことから、夫婦は22日に行方をくらました。

 警察および福祉当局は、裁判所が設定した接種期限の25日を前に、一家を捜索している。一方、子どもの父親は裁判所の命令差し止めを求めており、一家は無期限に逃げ続けるとかたくなな態度を示している。

 B型肝炎は、肝臓がんや肝硬変を引き起こす可能性もあるが、父親は同紙に対し、全ての子どもを一律に扱う政策には賛成できないと主張。「子どもは現在2490グラムと小さいにもかかわらず、倍の大きさの子どもに接種するのと同量のワクチンを受けさせられる。わたしはただ、ワクチンに関する情報をもっと得たかっただけだ」と語った。

 夫婦は、ワクチンにはアルミが含まれており、そのアルミがB型肝炎よりも深刻な被害を息子に及ぼす可能性があると考えている。さらに肝炎のほうが、ワクチンから感染する可能性のある神経系の障害よりも効果的にコントロールできるのではないかとも思っているという。

 オーストラリアでは予防接種は義務化されていないが、ニューサウスウェールズ(New South Wales)州では保健政策の一環として、B型肝炎の母親が出産したすべての子どもに、出産から12時間以内、その後6か月間で4回の免疫グロブリン接種を子どもに受けさせるよう義務付けている。この子どもの母親は、数年前にB型肝炎と診断されている。

 子どもの父親は、2005年に誕生した娘にもB型肝炎の予防接種を受けさせなかったことも明らかにした。

 この両親が子どもの予防接種を拒否したことを州当局に通報した医師の1人は子どもの人権が無視されていると主張している。この医師は、予防接種は自由意志によるべきだと強く信じているとした上で、「予防接種を受けなければ将来深刻な悪影響が出る恐れがあり、子どもが自分自身で判断できないうちは、子どもたちを守るのがわたしたちの義務だ」と語り、今回の場合は「一種の児童虐待」だとして非難している。(c)AFP