【12月4日 CNS】越境EC向けのスマート物流サービスを手がける浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)の企業では、生産ラインを出たばかりの商品が梱包され、海外へ向けて出荷の準備が進んでいる。責任者の呉(Wu)氏は、その様子を見送りながら、ここ数年で大きく変わった「貨物の旅」を実感していた。この一見普通の越境EC貨物は、これから長江デルタ地域(上海市、江蘇省<Jiangsu>、浙江省)を巡る「周回旅」に出る。そしてその旅は、地域一体化の進展によって、かつてとは比べものにならないほどスピーディーになりつつある。
 
呉氏は「数年前までは、一つの貨物を海外に送るだけで、本当に手続きが大変でした」と振り返る。都市や部門ごとに基準が異なり情報共有も進んでいなかったため、同じ貨物でも都市ごとに重複申告が必要だった。書類の準備も煩雑で、海外に送り出すまでに何日もかかるのが当たり前だったという。

変化は、長江デルタ一体化戦略の本格的な推進によって始まった。
 
現在、このスマート家電製品の旅は大きく様変わりしている。地域をまたぐ通関、物流、金融決済の協調メカニズムが整備され、寧波市・上海市・杭州市(Hangzhou)・蘇州市(Suzhou)など複数都市にまたがる業務にかかるコストが大幅に下がった。「以前は通関も決済も物流も、全部別々に動き回らないといけませんでした。今は全体の流れが本当にスムーズです」と呉氏は話す。
 
こうした変化の背景には、行政区分の壁を越えた制度連携を進める長江デルタの取り組みがある。通関、物流、金融などの制度協調が進むことで、地域内の要素移動の効率が飛躍的に向上した。税関の協調では、国際貿易「単一窓口」の導入が進み、「連携荷役」モデルにより港湾作業の一体化が進むなど、通関・物流の効率がさらに高まっている。
 
いまでは長江デルタの物流ネットワークが高度につながり、三省一市の企業は「家の近くからそのまま海外へ」アクセスしやすくなっている。呉氏のように一体化のメリットを実感する企業は今後さらに増える見込みだ。

浙江省発展改革委員会の担当者によれば、習近平(Xi Jinping)国家主席の方針に沿って政策協調が進み、行政データの共有は大きく前進したという。三省一市は共同で「電子証明書の共有規格」を策定し、40種類以上の証明書が省をまたいで相互認証されている。また、産業データも標準化と信頼技術に基づいて共有され、デジタルトレードの基盤が整いつつある。
 
中央政府もまた、「一体化」と「高品質」を軸に、医療連携、エネルギー接続、グリーンサービス認証、共同誘致などに関する制度改革を進め、長江デルタの協調開放を後押ししている。こうした施策は、外向型企業にとってかつてないビジネスチャンスを生み出している。呉氏は「寧波と上海自由貿易区の政策連動が強まり、ブランドの海外展開やデジタルマーケティングに挑戦しやすくなりました」と話す。

この貨物の「長江デルタ旅」は続いている。寧波の製造力と港湾力、そして長江デルタ各地のイノベーション資源を組み合わせながら、企業は「製造+ブランド+越境ビジネス」という新たな枠組みを築きつつある。より多くの製品が効率的なネットワークを通じて世界へと運ばれ、デジタルトレードやサプライチェーン金融がその背後を支えている。

寧波の工場から海外の消費者へ——。

一つの貨物がたどるその道のりは、長江デルタの地域協調がもたらす変化の象徴ともいえる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News