各地で医療機器産業の育成競争が加速
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【10月21日 東方新報】北京市や上海市といった大都市が産業の主導権を争い、江蘇省(Jiangsu)や浙江省(Zhejiang)などの経済大省が優位性を築き、さらに蘇州市(Suzhou)や成都市(Chengdu)などの革新都市が独自の成長エンジンを育てるなど、中国各地で医療機器分野への進出が活発化している。各地は次々と支援策を打ち出し、医療機器産業を高付加価値化、スマート化、革新化へと押し上げようとしている。
最近では、北京市で「薬品・医療機器イノベーションサービスステーション(海淀)」が開設された。これは昌平区、経済技術開発区、大興区に続く4か所目の市級拠点で、これにより北京市は東西南北をカバーする医薬品・医療機器イノベーション支援ネットワークを形成した。これにより、政策支援の提供範囲がさらに身近になった。
浙江省では、「十の産業チェーン・百の交流会・一万企業参加」を掲げたシリーズ活動の一環として、杭州市(Hangzhou)で医療機器分野のマッチングイベントが開催された。臨床現場のニーズと製品供給側の精密なマッチングを図り、革新医療機器企業の製品化・実用化ルートを円滑にするのが目的だ。臨床の質の向上と産業基盤の強化を同時に進め、「医療・医薬・医械」の連携により、産業チェーンと価値チェーンの高度化を目指している。
上海市は「高付加価値医療機器産業の全工程発展促進行動計画」を発表した。2027年までに、国内第3類医療機器の新規認可件数を500件以上、海外での認可製品を100件以上増やすとともに、年産値100億元(約2119億5000万円)を超える有力企業を2社育成し、高付加価値医療機器産業の集積拠点を3カ所設ける計画だ。
江蘇省も「医薬品・医療機器監督制度の深化改革と医薬産業の高品質発展を促進する政策」を打ち出した。医療機器分野では、越境委託生産の試行や、一定地域内の企業間での実験室共有、条件を満たす製品の出荷サイクル短縮などを進める。また、医療機器の登録・認可サービスを最適化し、革新薬や医療機器のための優先審査ルート(グリーンチャネル)を設置。「通年受付・随時申請・即時登録」を原則とし、革新製品の市場投入を迅速化する。
こうした動きは一線都市や経済大省だけではない。
国家薬監局の医療機器審査センターが公表した最新の特別審査結果では、全国で8件の製品が優先審査の対象となり、そのうち4件が蘇州企業による申請だった。蘇州が革新分野で急成長している背景には、「チェーン型サービス」モデルの導入がある。製品の研究開発支援から審査手続きの効率化、生産段階でのリソース確保まで、開発から市場化までを一貫して支援する体制を整えている。
成都でも高付加価値医療機器の成果が相次いでいる。最近では、成都の「瑞德泰智能医療設備有限公司」が独自に開発した「穿刺手術用レーザー位置決めシステム」が国内第3類医療機器登録証を取得し、成都が高端医療機器研究開発分野で新たな成果を上げた。この背景には、成都がバイオ医薬産業を重点分野として育成してきた政策がある。2025年初頭に発表された「成都市バイオ医薬産業高品質発展推進政策」では、医薬品・医療機器の研究開発支援や臨床研究の質向上など、25項目の施策が盛り込まれている。
各地の政策支援と専門産業団地の後押しにより、中国の医療機器イノベーションは急速に加速している。北京市の大興バイオ医薬基地はその代表例だ。基地の管理委員会主任・孫鋭東(Sun Ruidong)氏によると、大興バイオ医薬基地は北京市の医療機器製造の中心拠点であり、国家レベルの中小企業集積地として認定されている。これまでに国家革新医療機器または特別審査対象に指定された製品を26件育成し、そのうち13件がすでに市場に投入された。さらに、市レベルの革新医療機器として11件が選定され、6件が販売を開始している。2024年に北京市で承認された国家革新医療機器4件のうち、半数が大興基地によるものだった。
現在、中国の医療機器産業は多方面で飛躍を遂げている。脳―機械インターフェースシステム、医療ロボット、多モード冠動脈OCTシステム、超広体CTなど、これまで国内外で空白だった先端製品が次々登場し、GEヘルスケア(GE HealthCare)やシーメンス(Siemens)といった国際大手と肩を並べて競争している。中国は今、「革新を促し、実用化を支え、海外展開を開く」産業エコシステムを政策的に整備しつつあり、医療機器産業の高品質な発展を力強く後押ししている。(c)東方新報/AFPBB News