【3月13日 東方新報】不動産業界では、「小陽春(春先のプチ回復)」に対して楽観的な見方が広がっている。

「この物件、売れちゃったみたい」。3月8日、上海市で働く90年代生まれの王漸(Wang Jian、仮名)さんのもとに、不動産仲介業者から一通の連絡が届いた。彼女が以前見学した中古物件が成約したという知らせだった。

 2025年の春節(旧正月、Lunar New Year)明け、王漸さんは中古住宅の価格が比較的低い水準にあることに気づき、初めてマイホーム購入を検討し始めた。実需層として、3月初旬に約10件の中古物件を集中的に内見した。その後の1週間で、彼女は仲介業者から立て続けに3件の成約情報を受け取った。

 実需層の参入が増える中で、上海の不動産市場は成約件数が顕著に伸びている。3月1日と2日には、上海の中古住宅の成約数がそれぞれ1000件を突破し、さらにその数字を上回る日も現れている。

 上海市の不動産情報サイトによると、3月8日の中古住宅のネット契約件数は1432件に達し、2025年で初めて1日あたり1400件を突破した。これは、2024年12月28日の1466件に次ぐ過去2番目の高水準となった。

 複数の不動産仲介業者によると、最近の週末は連日案内に追われて店にスタッフがいないことも多いという。「昨日(3月9日)はうちの店舗だけで5件成約があった」と、普陀区の曹楊エリアにある店舗の営業担当は語る。

 上海の大手仲介会社の関係者も、「現在は買主が増えており、人気物件には問い合わせが集中している。売主側も値下げする必要がなくなり、少し価格を下げるだけで成約に至るケースが増えた。その結果、成約までの期間も短縮している」と話す。

 こうしたスピード成約が成約件数の増加を後押ししている。上海市のデータによると、3月1日から8日までの中古住宅成約件数は7572件、1日平均で約940件に達した。

 不動産コンサルティング会社・億翰智庫の陳嘯天(Chen Xiaotian)董事長は、「この日々の成約件数は、昨年末の上海不動産市場が最も活況だった時期に匹敵する水準だ」と述べた。2024年12月には、月間成約数が2万9700件を超え、1日平均で900件以上となっていた。「今回の3月初旬の動きは、市場が底を打って回復し始めている明確な兆候だ」と話す。

 また、不動産業界の総合情報サイト「58安居客房産研究院(58 Anjuke Institute)」の張波(Zhang Bo)院長も「2024年の第4四半期には上海市場の回復傾向がはっきりしていた。今回の成約件数の上昇は、その回復を裏付けるものだ」と指摘する。3月に入ってから取引件数が一段と伸びており、市場回復の流れがより強固になったという。

 張波院長によれば、3月はもともと不動産の成約が増える時期であり、春節で一時抑えられていた需要が一気に放出されるタイミングでもある。また、子どもの進学を見据えた家庭が3月を「選ぶべき時期」と捉えていることも理由の一つだ。

「このように、3月以降の中古住宅市場の活発さは、需要の解放と市場期待の高まりが同時に作用した結果だ。この流れは『小陽春』の相場を後押しし、今年の市場にさらなる活力を与えている」と張波は語った。

 58安居客のオンラインデータによると、現在は新築物件よりも中古物件の検索件数が多く、過去1週間でもその関心は上昇傾向にある。業界関係者は、3月の成約件数はさらに良好な結果になると見ている。

 上海では、中古住宅の供給拡大がすでに2月から明確になっていた。上海中原地産のデータによれば、2025年2月の中古住宅成約件数は約1万5400件で、前月比では約4.31%減少したものの、前年同月比では124%以上の大幅増となった。

 民間調査機関の上海鏈家研究院の楊雨蕾(Yang Yulei)主任アナリストは、「春節後の上海市場は回復の勢いが非常に強い」と述べた。2月は春節休暇の影響で実質的な取引期間は2週間程度だったが、それでも前年同月比で120%超の成長を見せた点は、市場の熱気を物語っているという。上海鏈家の内見データでも、春節後2週間の案内件数は前の週と比べて約20%増加しており、実需層の動きが活発になっている。

 成約の内容を見ると、低価格帯の「古くて狭い」中古住宅が中心だ。鏈家のデータでは、2月の成約のうち90平米未満の物件が全体の66.3%を占め、1月よりも3.6ポイント上昇した。価格帯では、200万元(約406万円)以下の成約比率も前月より5ポイント増えており、春節明けに実需層が積極的に市場へ戻ってきていることが示されている。(c)東方新報/AFPBB News