【5⽉31⽇ Peopleʼs Daily】中国・吉林省(Jilin)長春市(Changchun)にある面積1万5000平方メートルの皓月集団(Haoyue Group)の沃金黒牛養殖模範基地では800頭の黒牛が音楽を聞きながら食事をしたり、歩き回ったり、機器によるマッサージを楽しんだりしている。

 それぞれの牛の番号をスキャンすると、月齢、免疫状態、食べた餌の量、各時期に増加した肉の量が一目瞭然だ。この沃金黒牛は皓月集団が作り出した特許品種で、飼育技術や生育環境などが他の肉牛と異なる。

 そんな大金を投じて利益は出るのか。沃金黒牛1頭からは平均450キロの肉が取れる。肉質によって価格は異なるが、1キロ当たり300元(約5955円)の平均価格で計算すると、牛1頭分の牛肉で13万元(約258万円)以上を得ることができる。

 ビッグデータを駆使した飼育方式は高品質・高生産・低消耗という精密農業の特質の具現化だ。皓月集団の事例は、多くの農業分野で科学技術を有効活用するための参考になる。

 デジタル化された畜産業は広大な市場を持っている。基地責任者によると、ここ数年はさまざまな要因による悪影響を受けたが、売上は勢いを増している。その理由は消費者の健康志向だ。デジタル飼育による高品質の牛肉はすでに市場に浸透した。中国の庶民の生活水準の向上、消費理念の飛躍的向上、飲食構造の改善に伴い、デジタルがけん引する産業の発展と製品の質の向上は、市場の一層の繁栄を後押しするに違いない。

 低炭素循環、グリーン発展を加速する新たな畜産業の潜在力は大きい。今年の中国中央1号文件は、「サイレージの発展に力を入れる。茎とわらによる家畜の飼育の推進を加速する」と表明した。吉林省の「1000万頭の肉牛建設プロジェクト」は、その実施事例の一つだ。無汚染のトウモロコシの茎を飼料にして牛を育てており、売れ行きは上々だ。現地では情報化に積極的に取り組み、スマート畜産デジタル化プラットフォームを開発して応用している。より多くの農家や畜産業者がこれまでの方式を転換して、栽培と飼育の結合を実現した。農業はグリーンな発展の道筋に沿って、さらに質と効率を高めつつある。

 牛はほぼ全身が「宝」だ。肉を食用にするだけでなく、牛皮を材料に高価な靴やかばんや服、アクセサリーを作ることができる。牛の骨と軟骨からはカルシウム粉末やコンドロイチン硫酸などを、内臓からはヘパリンを作ることができる。牛の心臓を使った生物弁は医療実習に使える。肉牛の飼育や飼料の生産、食品加工、ワン・ヘルス(人・動物・環境を結合させた健康構築体系)、製革、有機肥料などによる「牛関連産業チェーン」が出現する。

「牛関連産業チェーン」の勃興は、農業現代化の新たな活力であり、養殖業の多元化・高度加工の可能性を示している。第1・2・3次産業が融合した発展を推進し、産業チェーン全体の組み合わせを練り上げ、デジタル技術を向上させて産業価値を掘り下げ、産業ルートを広げることで、産業チェーンをますます長くし、産業群をますます大きくすることができる。(c)Peopleʼs Daily /AFPBB News