【1月25日 東方新報】中国政府は1月17日、2022年末の人口が14億1175万人で、61年ぶりに前年より人口が減ったと発表。「人口減少社会」が到来し、政府も自治体も出産奨励策に躍起となっている。

 中国南部の広東省(Guangdong)深セン市(Shenzhen)は1月11日、1人目を出産した夫婦に3年間で7500元(約14万3250円)、2人目は1万1000元(約21万100円)、3人目に1万9000元(約36万2900円)を補助する方針を発表した。3人の子どもを産むと合計3万7500元(約71万6250円)の育児補助金を受け取ることになる。

 IT企業が集中し、「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深セン市は20代のIT技術者らが多く集まり、「中国で最も若い市」と言われている。その深セン市が出産を奨励するのは、大都市で暮らす若者は未婚・晩婚の傾向が強く、結婚しても出生率が低い社会の現状を反映している。2人目以降を産んだ家庭に補助金を出す地域は増えているが、深セン市は1人目から補助金の対象となるのが特徴だ。

 一人っ子政策は人口抑制を目的に1979年から始まった。2013年を境に生産年齢人口(15~64歳)の減少が始まると、中国政府は2016年からすべての夫婦に2人目の出産を、2021年には3人目までの出産を認めた。さらに3歳以下の乳幼児にかかる養育費を個人所得税の控除対象にするなど育児コストの負担を減らす政策を導入し、自治体にも出産奨励策を求めている。

 中国西部の四川省(Sichuan)攀枝花市(Panzhihua)は2021年7月、中国の自治体で初めて育児補助金の支給を始めた。第2子、第3子を持つ家庭に子ども1人につき3歳まで毎月500元(約9591円)の育児補助金を支給。次々と同様の制度が各地で導入された。

 企業に勤める女性の産休期間も拡大している。ほとんどの省・直轄市・自治区では、国の定める98日の産休期間に60~90日を上乗せして158~188日の産休を保証。3歳未満の子を持つ夫婦は年間それぞれ5日間の育児休暇も取得できる。東北部の吉林省(Jilin)では企業側の同意があれば1年間の産休を認めている。

 東部の江蘇省(Jiangsu)では、女性従業員が産休期間中に支払う社会保険費用について第2子で50%、第3子で80%を助成。山東省(Shandong)は育児負担軽減策の一環として、3歳未満の乳幼児を預かる保育所に対し1人あたり月額300元(約5755円)を助成している。

 湖北省(Hubei)荊門市(Jingmen)は、子どもが2人いる家庭が住居を購入する際に2万元(約38万3674円)、3人いる家庭には4万元(約76万7348円)を補助。北京市は公営住宅の入居で未成年の子どもが多い家庭を優先すると表明している。

 中国では2022年の出生数は956万人で、1949年の建国以来、初めて1000万人を下回った。2016年の1786万人からわずか6年で半分近くにまで減少しており、第2子・第3子を認めた効果は見られない。65歳以上の人口は2億978万人で、人口の14.9%を占めるようになった。今後、急速な勢いで少子高齢化が進み、経済成長が鈍化する可能性がある。

 若者の高学歴化により晩婚化が進み、さらにライフスタイルの変化で結婚を望まない「不婚族」も増加。結婚しても「子どもは1人で十分」という夫婦が多い。「3歳から始まる」と言われるほど激しい受験戦争を勝ち抜くため、財産の大半を教育費に注ぐ家庭は珍しくない。不動産価格も高騰する一方。2人も3人も子どもを育てる余裕がある家庭は少ないのが実情だ。

 中国政府は2021年、学校の宿題と塾通いの負担を減らす「双減政策」を発表。特に学習塾については「非営利団体にすること」「休み期間の開講を認めない」など実質は「塾禁止令」にあたり、全国の学習塾が廃業に追い込まれた。受験戦争の過熱化を防ぐ狙いだが、家庭の教育費を減らし、2人目以降の出産を促進する狙いもあると言われている。

 国も自治体も懸命にあの手この手で出産を奨励しているが、少子化は経済発展が進んだ国の共通の課題。一連の奨励策が今後どれだけ効果があるかが注目される。(c)東方新報/AFPBB News