【12月5日 AFP】2021年の世界の軍需産業の売上高は増加したものの、新型コロナウイルスの流行を背景としたサプライチェーン(供給網)の制約を受けて伸びは限定的なものにとどまった。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が5日、報告書を公表した。

 報告書によると、軍需大手100社の2021年の兵器・関連サービスの販売総額は5920億ドル(約80兆円)だった。広範な供給網の問題を受け、伸び率は前年比1.9%増にとどまった。

 SIPRIのナン・ティアン(Nan Tian)上級研究員はAFPに対し、「長引く新型コロナ流行の影響が軍需産業にも出始めている」と指摘。労働力不足と原材料の調達難により生産能力が低下し、納期にも遅れが出ていると分析した。

 報告書は、ロシアのウクライナ侵攻も供給網の問題を悪化させるとの見方を示した。その理由として、ロシアが原材料の主要供給国である点を挙げている。

 半面、ティアン氏は、ウクライナ侵攻に伴い「兵器需要は今後数年にわたり確実に拡大する」と予想。同国に大量の兵器を供与した国が取り崩した備蓄を補充することに加え、安全保障環境の悪化を受け各国は軍事力増強に動いているとしている。

 国別では、米企業が世界の販売総額の50%強に相当する2990億ドル(約40兆円)を売り上げたが、前年比では0.9%減となった。米企業は世界の大手100社のうち40社を占めている。

 中国企業は8社が名を連ねた。売上高は同6.3%増の1090億ドル(約15兆円)。欧州企業は27社で同4.2%増の1230億ドル(約17兆円)を売り上げた。

 一方、報告書は、プライベートエクイティファンド(非上場企業を買収して企業価値を高めた後に売却するなどして利益を得る機関投資家)が軍需企業を買収する傾向がここ3、4年の間に顕著になってきていると指摘。ティアン氏は、買収後は財務諸表が作成されないため、経営状態が不透明となり、実態の追跡が困難になるとの懸念を示した。(c)AFP