【11月29日 AFP】「われわれはだまされた」──。コンゴ民主共和国南東部コルウェジ(Kolwezi)に住むアルフォンス・フワンバ・ムトンボさん(70)は、コバルトの露天掘り採掘場を見下ろすがれきだらけの場所に立ち、こう言った。

 一帯はかつて、大通りに小ぎれいな住宅が並ぶ活気あふれる場所だった。それが今や、ムトンボさんの大切な家は、破壊された民家の残骸に囲まれ、そばにコンクリート壁を挟んで巨大な採掘場が広がっている。

 鉱山を所有する中国企業は採掘拡大を目指しており、ムトンボさんが暮らす地区の住民の多くが補償を受け取って退去に応じた。だがムトンボさんは立ち退きを拒み、さらに良い条件を引き出そうと何とか耐えている。

 ムトンボさんは、居住区の行く末について幻想を抱いているわけではない。「ここはいつか消滅する」

■誰もいなくなった

 コルウェジの人口は50万人以上。地下には、銅やコバルト、金を産出する世界有数の鉱床があり、コンゴ経済の原動力となっている。

 同市はすでに周囲を坑道で取り囲まれており、露天掘りの巨大採掘場や作業用の道路が目立つ荒涼とした風景が広がっている。さらに採掘は市内でも徐々に行われるようになり、数千人が立ち退きを余儀なくされ、不当な処遇への不満も聞かれる。

 コンゴの鉱山関係の記録によると、コルウェジ市内の大半に採掘許可が下りている。

 コルウェジは1937年、当時のベルギー領コンゴの鉱山公社によって開発された。独立から7年後の1960年、独占的地位にあった同社は一時国有化され、最終的にジェカミン(Gecamines)と呼ばれる巨大な半国営企業となった。やがてコルウェジでの採掘が盛んになると、ジェカミンはムトンボさんが暮らす地区のような労働者向けの居住区の開発を進めた。

 ジェカミンは数十年間にわたるずさんな管理の末、1990年代に操業を停止したが、労働者居住区に残る住民の多くは、今も同社とつながりがある。

 ジェカミンを退職したマルタン・ティノ・コルピー・カペンダさん(60)は、隣人宅の跡地に立ち、「誰もいなくなり、残ったのはわれわれだけだ」と語った。

 カペンダさんも、隣接する銅・コバルト鉱山を所有する中国企業、ムソノイ鉱山会社(COMMUS)から、同社の提示額を上回る補償の受給を希望している。

 カペンダさんの居住地区には、コンゴでは珍しく電気と水道が通っている。同社が提示する補償額では、現在の住まいと同等の住宅を他の場所で見つけることができないと懸念する住民もいる。

 AFPが確認した市の統計によると、住民3万8000人のうち約2000人が過去半年以内に同地区から退去した。

 匿名を条件に取材に応じた市の関係者は、3年以内に居住区全体が消滅する可能性があるとの見方を示した。COMMUSは退去する住民への補償として約100万円を提示しているが、残っている住民の多くは、少なくともその3倍の額を要求しているという。