【11月24日 CNS】淡水魚養殖の地として知られる中国・浙江省(Zhejiang)湖州市(Huzhou)で、デジタル技術を導入した新しい養殖モデルが軌道に乗っている。

 この試みを先導しているのは地元で「水産博士」として知られる沈杰(Shen Jie)氏だ。

 彼は、モノのインターネット(IoT)の国家プロジェクトを主導したエンジニア。国際電気標準会議から「IEC1906賞」を受賞したこともある。しかし、2016年に沈氏は仕事を辞め、自身のチームを引き連れて故郷に戻り、水産業者になった。

「地元の基幹産業の養殖は大変な仕事というイメージがあり、養殖業者は養魚池の状態を確認するために夜通し池を巡回することもあります」と沈氏。モノのインターネット技術を使って養殖ができないか。沈氏は地元の人たちの苦労を少しでも軽減したいと開発に乗り出した。

 開発は容易ではなかった。養魚池で魚が一晩で死んでしまう惨劇も目の当たりにした。沈氏のチームは、養殖業者のニーズを聞き取った上、モノのインターネットのシステムを使って、養魚池に自動酸素供給サービスを提供するなどして、業者が夜も安らかに眠ることができるようになった。

 今では、業者はスマートフォンのアプリから24時間リアルタイムで養魚池の水質をチェックできるほか、酸素を供給するためのエアレーターのスイッチをリモートで制御することもできる。

 次のステップは「デジタル魚倉庫」の構築だという。水産サプライチェーンは、養豚や穀物産業とは異なり、安定供給が難しい性質を持つ。デジタル魚倉庫は、スーパーマーケットやネットショップやレストランチェーンなどと連携し、注文を受けた魚を迅速に発送する安定供給システムを目指している。

 上海市、杭州市(Hangzhou)、蘇州市(Suzhou)などにネットショップから発送される水産物は1日約1万5000キロに達する。市場は大きく、伸びしろがある。

「今後5~10年で漁業は確実に進化を遂げる」。モノのインターネットによる水産の未来に沈氏は可能性を感じている。(c)CNS/JCM/AFPBB News