【11月27日 AFP】エジプトで今月開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で、ロシアによるウクライナ侵攻が、人だけでなく、地球環境にも甚大なダメージを与えていることが指摘された。

 ディーゼルエンジンの戦車や戦闘機、ミサイル発射から、都市や森林の火災、避難民の大移動まで、ウクライナ紛争に伴い、大量の温室効果ガスが排出されている。

■ウクライナ政府による排出量試算

 ウクライナは、ロシアが2月24日に開始した侵攻に直接・間接的に関連する温暖化ガス排出量の算出を始めている。戦争状態にある国として初の試みだ。

 紛争開始から2か月目に立ち上げられたプロジェクト「戦争の地球温暖化ガス算定に関するイニシアチブ(Initiative on GHG Accounting of War)」によると、建物・森林・畑の火災による排出量はCO2換算で2380万トン、戦闘そのものによるものは890万トン相当に上っている。

 避難民の移動による排出量は140万トンに上り、今後、破壊されたインフラを再建すればさらに4870万トンが排出されるとしている。

 ウクライナ紛争の直接的な結果として7か月間で計8300万トン近くが排出されている計算だ。比較として、オランダの全排出源を合わせた同期間の排出量は約1億トンだという。

 グローバルな正義を推進する国際組織「ティッピングポイント・ノース・サウス(Tipping Point North South)」の共同創設者デボラ・バートン(Deborah Burton)氏によると、イラクやシリア、その他の紛争についてこれほど詳細なデータはない。

■軍隊のカーボンフットプリント

 スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)の国際気候変動政策研究グループを率いるアクセル・ミカエロワ(Axel Michaelowa)氏は「この分野(軍事)は排出量が非常に多いにもかかわらず、誰も本気で取り組んでこなかった」と指摘する。

 専門家はこれまで正確なデータがなかったことを認めつつ、戦時および平時でも軍隊のカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量をCO2に換算した数値)は非常に大きいと主張している。

 今月、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論評では、世界の温暖化ガス排出量の1~5%は軍事関連によるものとされた。ちなみに英国の研究によると、世界の海運・航空業界が占める割合はともに2%程度となっている。

 仮に世界で最も軍事費が多い米軍を国家に置き換えると、国民1人当たりの排出量は世界一となる。また米軍のF35戦闘機1機が約185キロ飛行した場合、英国の平均的なガソリン車による1年間の排出量と同程度の二酸化炭素(CO2)が大気中に放出される計算になる。