【9月26日 AFP】ウクライナ中部ウマニ(Uman)は25日、戦時下にもかかわらず、世界中から集まった数万人のユダヤ人巡礼者であふれかえった。

 ウマニには、ユダヤ教敬虔(けいけん)派(ハシディズム、Hasidic Jewish)の高名なラビ(宗教指導者)・ナフマン(Nachman)の墓があり、毎年ユダヤ暦の新年祭「ロシュ・ハシャナ(Rosh Hashanah)」に巡礼が行われる。

 前線からは比較的遠いものの、ウクライナ当局はロシア侵攻を理由に、今月25~27日の今年の巡礼は取りやめるよう呼び掛けていた。

 だが、警告をよそに、伝統的な黒い衣服に身を包んだ巡礼者たちはウマニの通りを埋め尽くし、新年を祝った。「神とつながることのできる、一年で最も重要な日だ」と、巡礼者の一人で医師のアーロン・アレンさん(48)はAFPに語った。

「空襲警報は鳴ったけれど、イスラエルから来たわれわれにしてみれば、空襲警報なんて慣れっこだ。どうすればいいか分かっているし、かなり安全だと感じている」

 1810年にウマニで死去したラビ・ナフマンが、かつて説教で、ロシュ・ハシャナに自身の墓を巡礼した者は「地獄から救われる」と約束したと話す巡礼者も多い。

■にぎやかなお祭り

 ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は25日、国民向けに毎日行っている演説で、「ロシュ・ハシャナに当たり、ウクライナのユダヤ人社会と世界中の全ユダヤ人にお祝いを言いたい」と述べ、「ウクライナの勝利と平和のためのすべての祈りが聞き届けられますように」と続けた。

 警察は墓を取り巻く広域に厳重な警備を敷き、地元住民とハシディズムの巡礼者だけに通行を許可。アルコールや花火、おもちゃの銃の販売や、午後11時から午前5時までの外出も禁止した。それでも、聖地周辺はにぎやかなお祭りムードに包まれた。

 イスラエル北部ツファット(Safed)から息子2人を連れ、片道30時間かけて巡礼に来たヤニブ・バクニンさんは、「ラビ・ナフマンは、たとえ戦争が起きても、自分の言葉に耳を傾ける者は影響を受けないと言っている」と話した。「私たちは完全に守られている」

 ルーマニアまでは飛行機で、そこからは15時間バスに揺られてきた。「神に祈るつもりだ。願わくは、ウクライナが傷つかず、戦争に勝利しますように。ラビ・ナフマンがここに眠っているのだから、ウクライナには加護がある」

 ウクライナ・ユダヤ人委員会(UJCU)は、すでにウマニに到着した巡礼者は2万3000人を超えたとしている。(c)AFP/Dmytro GORSHKOV