【9月12日 AFP】イスラエル考古学庁(IAA)はこのほど、古代ヘブライ語で記された約2700年前の第1神殿(First Temple)時代に属する、3例目となる貴重なパピルス文書の断片を公開した。考古学者が米国で所在を突き止め、所有者からイスラエルに引き渡されていた。

 4行で構成された文書は「イシュマエルへ、送る」で始まるが、残りの文字は不完全で判読不能。考古学庁ユダヤ砂漠(Judaean Desert)文書班のジョー・ウジエル(Joe Uziel)氏は「何がどこに送られたのか判然としない」と語った。

 同庁盗掘防止班のエイタン・クレイン(Eitan Klein)氏によると、当時、パピルスは公式文書用として使われていた。ユダヤ砂漠の乾燥した気候によりパピルスが保存されたとみられ、これより前に確認された第1神殿時代のパピルス文書は2例しか存在しない。

 文書が発見されたのは、偶然の産物だった。同庁の研究者シュムエル・アヒトゥブ(Shmuel Ahituv)氏が2018年、故人となった研究者アダ・ヤルデニ(Ada Yardeni)氏の古代ヘブライ文書に関する未完の著作物を完成させる仕事を任されたことだった。

 アヒトゥブ氏は著作物の草案の中に、存在を知らなかった今回のパピルス文書の写真があるのを発見。クレイン氏やヤルデニ氏の娘の協力を得て、米国の研究者と連絡を取ることに成功した。ヤルデニ氏に文書の所有者を紹介していたのが、この米研究者だった。

 米モンタナ州に在住する所有者は、亡くなった母親から文書を相続。この母親は1965年、パレスチナ考古学博物館の学芸員から購入したか、寄贈されたとみられる。もともとは、ベドウィン(遊牧民)がユダヤ砂漠の洞窟で見つけ、ヨルダン川西岸(West Bank)のベツレヘム(Bethlehem)の古物商に売却し、学芸員の手に渡った可能性が高いという。

 考古学庁は2019年に所有者をイスラエルに招き、同国の施設で保存するのが最善と説得し、所有者はこれを受け入れた。

 文書の年代は、放射性炭素年代測定などにより特定した。ウジエル氏は今回の発見について「過去の人たちとより密接なつながりを持つことができる」と評価している。

 映像は7日撮影。(c)AFP