【9月8日 AFP】インドネシアのカリマンタン(Kalimantan、別名ボルネオ、Borneo)島で発見された人骨から、約3万1000年前に足の切断手術が成功裏に行われていたことが明らかになったとする論文が7日、豪グリフィス大学(Griffith University)などの研究チームにより英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 これまで確認されていた最古の切断手術は、フランスで発見された約7000年前の人骨に対するもので、今回の発見は太古の医学史を塗り替えるものとなる。こうした手術は定住型農耕社会でのみ行われると考えられていたが、今回の研究からは、石器時代のカリマンタン島に住んでいた狩猟採集民が、人体の構造や傷の手当てに関する高度な医療知識を持っていたことが示された。

 人骨は2020年、4万年前の壁画が残る洞窟で発見された。保存状態は非常に良好だったものの、左の足首から下が欠損。患部はきれいに切断されたとみられ、骨がこぶ状に再生していたことから、足が意図的に切断された可能性が高いことが分かった。

 歯や周囲の堆積物から、人骨は少なくとも3万1000年前のもので、20歳前後で死亡した人物のものと推定された。骨の再生具合からは、切断後6〜9年生存し、深刻な感染症にもかからなかったことが示された。

 研究チームはこのことから、当時の人々には「四肢の構造と筋系・脈管系に関する詳細な知識」があったと考えられると説明。術後には、定期的な傷口の洗浄や、包帯の巻き直し、消毒といった集中的な看護が行われていたと推測している。(c)AFP/Sara HUSSEIN