【9月3日 AFP】天王星と海王星の地下で生成される「ダイヤモンドの雨」が惑星の核に向かって沈んでいると考えられる現象は、宇宙のあちこちで起きている可能性があるとする論文が2日、発表された。研究チームは、一般的なプラスチックを使った実験でこの現象を再現した。

 以前からの仮説によると、天王星と海王星では、水素と炭素が非常に高い圧力と温度によって固形のダイヤモンドに変化し、ダイヤモンドの雨のように地下深くに沈んでいるとされてきた。

 今回、米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に掲載された論文は、水素と炭素に酸素が加わることで、ダイヤモンドの雨はこれまでの想定よりも一般的である可能性があると指摘。系外惑星では海王星や天王星のような巨大氷惑星が最も一般的と考えられることから、ダイヤモンドの雨は宇宙のあちこちで発生している可能性があるとしている。

 ドイツのHZDR研究所の物理学者で論文の共著者の一人、ドミニク・クラウス(Dominik Kraus)氏は、ダイヤモンドの雨は地球上の雨とはまったく異なると説明した。

 天王星と海王星の表面下には「高温・高密度の液体」が存在し、ここでダイヤモンドが生成され、1万キロ以上も下にある地球ほどの大きさの岩石状の核部分にゆっくり沈んでいると考えられている。

 クラウス氏はAFPに対し、沈殿していくダイヤモンドは「数百キロか、それ以上」の広大な層を形成している可能性があるとし、ダイヤモンドといっても「指輪にあしらわれている美しい宝石」のように輝いている可能性は低いが、生成される仕組みは地球のものと同じと考えられると話した。

 研究チームは、このプロセスを再現するため、炭素と水素と酸素の混合物として、食品の包装容器やペットボトルに使用されているPET(ポリエチレンテレフタレート)を用意した。

 研究チームが使用したのは真新しいPETだが、クラウス氏によると「原理的にはコカ・コーラ(Coca-Cola)のペットボトルでも実験できるはずだ」という。

 研究チームは、米カリフォルニア州にあるSLAC国立加速器研究所(SLAC National Accelerator Laboratory)でこのプラスチックに高出力レーザーを照射。「極めて明るいX線を速射」して肉眼では見えない粒子状のナノダイヤモンドが生成される過程の観察に成功した。

 クラウス氏は「こうした惑星には酸素が大量に存在するため、炭素から水素原子が奪われやすく、それだけダイヤモンドが生成されやすくなっている」と述べた。

 実験は、ナノダイヤモンドの新たな製造方法の可能性も示している。ナノダイヤモンドの用途は幅広く、薬効成分を調整する薬物送達技術や非侵襲性の手術、量子エレクトロニクスなどにも利用されている。(c)AFP/Daniel Lawler