【8月19日 AFP】2024年に開催されるパリ五輪・パラリンピックの大会組織委員会でトップを務めるトニー・エスタンゲ(Tony Estanguet)氏は、昨年8月に東京五輪を後にする際、「100メートル走の速さでマラソンを走る準備ができている」とAFPの取材で話していた。

 時計の針が刻々と進み、2024年7月26日の開幕まで2年を切る中、パリ五輪への準備は100メートルハードルのように次々と障害が立ちはだかっている。大きな頭痛の一つは安全面の問題だが、ここでは組織委とフランス政府が直面する他の三つの深刻な課題に注目する。

■膨れ上がる予算

 これまでの五輪でもたびたび見られたように、パリ五輪の予算管理は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行や昨今の急激なインフレが起きる前から厳しい闘いを強いられている。

 組織委は2020年9月、新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)を理由に、当時見積もられていた予算38億ユーロ(約5200億円)から4億ユーロ(約550億円)の削減を発表した。さらに、今度はインフレによる支出の問題が発生。関係筋はAFPに対し、「予算は非常に厳しい状況だ」と漏らす。

 五輪会場の他、橋や高速道路といった恒久的なインフラの建設を統括するために設立された企業のSOLIDEOは昨夏、予算を40億ユーロ(約5500億円)に引き上げた。そのうち15億5000万ユーロ(約2130億円)は、国庫から捻出される。

 追加コストが発生した場合は外部が負担すべきというのがSOLIDEOの立場で、それは恐らく財政保証をしている仏政府になると思われる。しかし、この厳しい時代において、過度の出費は国民の大会への支持をないがしろにするリスクがある。

■交通手段の準備も遅遅として進まず

 五輪を開催する理由の一つは、訪問客を引きつけることだ。しかし、大会期間中は国内外から1000万人が訪れると見込まれている中、観客の管理が負担になる可能性がある。

 五輪会場とパリ中心部を結ぶ二つの地下鉄線は、完成が間に合わない見通しとなっているが、組織委と政府は織り込み済みだとしている。

 陸上競技の会場となっているスタッド・ド・フランス(Stade de France)では、5月にサッカー欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2021-22)決勝が行われたが、ストライキと交通渋滞の影響による混乱が起きたことから、公共交通機関に注目が集まっている。

 フランスはバスの運転手不足にも悩まされており、組織委が大会に不可欠なバスなどをチャーターする際には、問題が発生するかもしれない。

 パラリンピックに関しても、交通機関や施設へのアクセスの悪さが問題視されているが、組織委は多くの改善を行っているところだと主張している。

■後手後手のドーピング検査

 反ドーピング界の複数の関係者は、組織委による反ドーピング機関の立ち上げが「非常に遅かった」ため、「国際オリンピック委員会(IOC)も心配している」ほどだとAFPの取材で明かした。

 大会期間中は国際検査機関(ITA)がドーピング検査を管轄することになっているが、同機関が適切に介入して仕事をできるかは、組織委の管理・運営に委ねられている。(c)AFP/Déborah CLAUDE