【6月28日 AFP】テニス、ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2022)は27日、女子シングルス1回戦が行われ、ウクライナのレシヤ・ツレンコ(Lesia Tsurenko)が同胞のアンヘリナ・カリニナ(Anhelina Kalinina)との2回戦に進出した。29日に行われる一戦では、「この戦争に勝つためには、まだ支援が必要」とのメッセージを世界に発信したいとしている。

 ウィンブルドンを主催するオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ(AELTC)は、ロシアが2月にウクライナへ侵攻したことを受け、ロシアとベラルーシの選手の出場を禁止した。そうした中で、共に初戦を突破したウクライナの両選手は、ドローのめぐり合わせにより、世界の観客に現在も続いている母国の窮状を訴える機会を獲得した。

 元世界トップ25で、現在は世界101位につけるツレンコは「私たちが強い国であることを示し、まだ私たちがここにいること、そして戦争が続いていることを世界に思い起こさせる一つの手段になる」とし、「私たちには助けがいる。この戦争に勝つためには、まだ支援が必要」と語った。

 侵攻が開始されて以来、ツレンコはイタリアに避難し、現在はテニスアカデミーに滞在しているが、今もキーウにとどまっている家族への心配が絶えないという。前週末には「自分が住んでいた家の建物からわずか100メートルの距離」にロケット弾が着弾したといい、「戦争が始まってからずっと、住んでいた街が爆撃されるたびに緊張感を覚える」と話した。

「毎日、心理士に相談している。戦争が終わらない限り、この緊張感からは解放されない。自分にはどうすることもできない」

 カリニナとの一戦では自身2度目のウィンブルドン3回戦進出が懸かるが、「気持ち的には、勝ち負けはもはや存在しない」。「自分にとっては人生において大きな問題がある。それは戦争。これに勝るものは何もない」と言う。

 一方のカリニナは、賞金の獲得が自身の援助活動の強化につながるとし、12万ポンド(約2000万円)が懸かるツレンコとの2回戦に勝つことが重要だと、別の見方をしている。

「勝ち負けを重要視している」というカリニナは「占領地域にいる祖父母を自分がかなり援助している。彼らはそこから離れることができない」と明かし、「すぐ隣には武器を持ったロシア兵がいる。私はできる限りの人々を援助していて、時には全く知らない人を助けることもある。私はスーパースターではない。とにかく自分のできる範囲で支援している」と話した。(c)AFP/Dave JAMES