【5月5日 AFP】米国の保守的な州は、薬殺による死刑執行が困難になっていることから、銃殺や電気椅子、ガス室といった過去の執行方法に注目している。

 南西部アリゾナ州の最高裁は3日、フランク・アトウッド(Frank Atwood)死刑囚の執行日を6月8日に決定した。アトウッド死刑囚は2週間以内に薬殺かガス室かを選ぶことになる。同死刑囚は1987年、8歳の少女を殺害したとして死刑を言い渡されていた。

 アトウッド死刑囚の弁護人、ジョー・ペルコビッチ(Joe Perkovich)氏によると、刑務当局はシアン化水素の使用を検討している。シアン化水素は、ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大虐殺)で使われたことで悪名高い殺虫剤「チクロンB」の主成分。

 アトウッド死刑囚の母親はオーストリアに住んでいたユダヤ人で、1939年にナチス・ドイツ(Nazi)から逃れてきたとされる。

 ガス室による死刑執行を認めているのは7州のみで、どの州も1999年以降は行っていない。ほとんどの州は死刑執行方法は薬殺のみとしている。

 だが、薬殺は死刑囚に無用な苦痛を与える恐れがあるとして合法性を疑われ、製薬会社は薬物の供給を拒み始めている。そのため全米で死刑執行が激減している。

 薬物注射を受けた死刑囚が2時間けいれんで苦しんだことから、アリゾナ州は2014年以降死刑を執行していなかった。しかし、当局は今年から再開すると決定した。

 2月には、地元のユダヤ人コミュニティーがシアン化水素の使用差し止めを求めて提訴したが、失敗に終わった。

 同州フェニックス都市圏(Greater Phoenix)のユダヤ人コミュニティー関係委員会(Jewish Community Relations Council)のティム・エクスタイン(Tim Eckstein)委員長は「ナチスがアウシュビッツ(Auschwitz)で100万人以上の殺害に使ったのと同じチクロンBを、この目的で使うなんてとんでもない」とアリゾナ州を非難した。(c)AFP