【4月9日 AFP】南米チリで、死の淵から救助された2羽の幼いコンドルが自然に返された。アンデス(Andes)山脈を象徴するこの猛禽(もうきん)類は個体数が減少しており、再野生化は種を維持するために極めて重要だ。

 プマリン(Pumalin)とリキーネ(Liquine)と名付けられた2羽は、14か月のリハビリを経て2月上旬、チリ南端のパタゴニア国立公園(Patagonian National Park)で解き放たれた。渓谷を見下ろす崖の上でおりから出されると岩棚までよちよちと歩き、大きな翼を広げて飛び立っていった。

 アンデスコンドルは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種レッドリストで「危急種」に指定されており、一羽一羽が希少な存在だ。 

「今日は大きな節目でした」。チリ再野生化財団(Rewilding Chile Foundation)のディレクター、クリスティアン・サウセド(Christian Saucedo)氏がAFPに語った。「とても複雑なプロセスです…捕らわれの身で生きるはずだった個体を(自然に)返したのです」

 IUCNによれば、野生に残っているアンデスコンドルは7000羽に満たないという。

■人による「迫害」

 最大の脅威は「直接的、間接的な人による迫害」だとIUCNは訴える。

 コンドルの保護団体「マンクプロジェクト(Manku Project)」のドミニク・デュラン(Dominic Duran)氏は「最大の脅威は、家畜を食い荒らすピューマや野犬を駆除するために人が仕掛けた毒餌です」とAFPに語った。

 腐食動物のコンドルは、毒餌を食べて死んだこうした動物の死骸をむさぼることがあり、多い時には30羽ほどが一斉に死んでしまうと同氏は説明する。

 さらに狩猟や、埋め立てごみのずさんな管理が原因の中毒、餌となる野生動物の個体数減少なども脅威だ。

 プマリンとリキーネの2羽を救助した財団は、米国人慈善家ダグラス・トンプキンス(Douglas Tompkins)氏の遺産だ。1990年、同氏は自然保護を目的に8000平方キロの私有地をチリとアルゼンチンに寄贈した。

 この土地に設置されたパタゴニア国立公園には現在、チリ国内のアンデスコンドルのうち推定70%が生息している。南米最大の個体群だ。

 雄のプマリンは1年以上前、大嵐の中で飛べなくなった状態で発見された。一方、雌のリキーネは一度リハビリを受けた後、再度悪戦苦闘しているところを救助された。

 2羽はこれから「コンドル社会のおきてを学ばなくてはなりません」と再野生化財団のサウセド氏。翼に埋め込んだ無線機で、野生復帰の進捗(しんちょく)状況を監視すると語った。

 映像は2月に取材したもの。(c)AFP/Pablo COZZAGLIO/Alberto PENA