JICA賞に選ばれた方は副賞として、JICAのアフリカへの取り組みを発信する
「JICAアフリカ広報レポーター」に認定され、今後JICAウェブサイトに掲載する広報記事制作などの広報活動を担っていただきます。

審査は次の方々にご担当いただきました。

・千葉康由氏(AFP通信ナイロビ支局チーフフォトグラファー)
・羽場久美子氏(青山学院大学名誉教授、神奈川大学教授、世界国際関係学会アジアパシフィック会長)
・JICA事務局

 
JICA賞

井上遼大さん 所属:明治大学

私は以前から漠然と、アフリカは“貧しく”、“可哀そう”だから、“援助してあげないと”いけない、という上から目線で考えており、現地の人びとの立場になって考えてみようという発想はなかった。 
今回のセミナーでまず驚かされたのは千葉氏の写真に写るマココの人びとが自分のイメージよりも“可哀そう”に見えなかったことだ。彼ら彼女らなりの生活を生き生きと生きていた。 
また、千葉氏が撮影していた現地の女性から「私たちは貧しくなんかないわ」と伝えられたエピソードは価値観を打ち壊されたような、ある意味でショッキングだった。 
そして、鈴木氏の開発の“援助”から“協力”へのパラダイムシフトや、アフリカが遠大なビジネスの可能性を秘めているお話なども、自分の考えを大きく転換させるきっかけとなった。
今回のセミナーを経て、私は以前の考え方がいかに間違っていたかに自覚的になることができた。アフリカはじめとした開発途上国にすむ人々のニーズは多様であり、西洋的な価値観でそれを画一的に論じることが極めて危険なことだと感じた。アフリカは西洋から見れば確かに“貧しく”、“可哀そう”だが、一方で彼らはそう感じていないかもしれない。そしてITの成長からわかるように、既得権益に塗れた西洋に比べて柔軟な対応が取れる部分もあるのではないだろうか。 
自分がいかにアフリカについて知らなかったか、についても自覚的になれた。そして、今回のセミナーで得たアフリカに対するイメージもまた一面的な理解に過ぎないと考える。例えば先に挙げた柔軟性だが、宗教や慣習など、柔軟性を阻害する要因も存在するだろうということは想像に難くない。 
これらを踏まえて私は、アフリカについて多角的な理解ができるように、まず現地に行って様々な現地の人の話をじっくり聞くこと、彼らがどう世界を見ているか知ることがすべての第一歩で最も重要なのだろうと結論づけたい。 
同年代の日本の人びとに伝えたいのは、「若者よ、ともにアフリカに行こう」ということである。

講評:JICA事務局

イベント中にも沢山のコメントや質問を頂き、また提出頂いたレポートを通しても参加者の皆さんがアフリカや国際協力について、どのように捉えているのか知ることができ、JICAとしても学びが多いイベントになりました。
レポートでは、まずはアフリカについて知ることやSNSを活用した拡散を提案する人が多い中で、「若者よ、ともにアフリカに行こう」と呼びかけていた井上さんは新鮮で面白く、JICAの取り組みをさらに知って頂き、どう考えるか、そしてどのように発信頂けるか、その未知な可能性にかける意味で、JICA賞に選ばせて頂きました。

 
AFPBB News賞

立崎未夕さん 所属:東京女子大学

私は今まで、途上国の方々が抱えている貧困と、私達日本が抱えている貧困の問題は全く別物であると考えていましたが、その考えは間違っていたのかもしれない、と思い始めてきました。 
途上国の人たちが苦しんでいるのは絶対的貧困という、明日食べる食事さえ手に入れることさえ困るくらい日々のお金に困っている貧困。日本が苦しんでいるのは、相対的貧困という、食べることはできるけど、周りの人たちと同じ生活水準を手に入れることができない貧困。2つの貧困は全く異なっているものであり、両者の貧困に対して異なったアプローチが必要であると思っていました。 
しかし、今回講義を聞いて、私は、途上国の貧困と日本の貧困には共通している部分も多く、細かい違いはあるものの、途上国と日本は同じ貧困の問題に直面しているのではないか、と考えるようになりました。日本も途上国も、お金がないゆえに満足に教育を受けられず、それが貧困から脱け出すことができない原因という点で共通しているからです。 _
そして、たとえお金が少なくても、才能や、真似できないくらいの努力によって奨学金を受けて高度な教育を受けることができる可能性がある、ことも日本と途上国でも同じです。そして程度の違いはあれども、上記のように学び貧困から脱け出すことは非常に困難であることも共通しています。このことから、近い将来、貧困が相対的貧困と絶対的貧困に分類される時代は終わるでしょう。 
私は貧困問題について同世代に伝えたいことは、貧困という問題にもっと触れるべき、ということです。貧困にあえぐ人は私達の想像以上にたくさん存在するから、より多くの人が関わるべきだし、そのことを同世代の人に伝えたいです。友達や家族とこの問題を話すことによって、私を含めた皆で貧困に対する関心を深めて、より多くの人が貧困という問題に取り組めるよう伝えます。 


講評:千葉康由氏 (AFP通信ナイロビ支局チーフフォトグラファー)

皆さんのレポートから、さまざまな方向へ思いを巡らせ、遠い世界をより近くに考え始めていることが伝わってきました。バイアスを超えた写真をこれからも撮影していこうと、逆に励みになりました。
今回、「途上国と日本は同じ貧困の問題に直面しているのではないか」と、自分の足元へも視点を戻しながら論じてくれた立崎未夕さんをAFPBBNews賞に選びたいと思います。
実はアフリカの人たちから「日本には貧困なんて無いだろう?」とよく聞かれます。皆さんならどう答えますか?

 
十大学合同セミナー賞

A.M.さん 所属:湘南白百合学園中学校

私は今まで発展途上国の人々に対して支援という一方的な視点しか持っていませんでした。ですが、今回のセミナーで私たちが常識としていることが、他国では常識ではなく、私達が相手の価値観を尊重し、相手とともに行動しなければ相手の素晴らしい社会観を壊してしまうのだとわかりました。
これからの私たちは、支援などという自分を上に見た立場をやめ、双方が話し合い協力して何かを作り上げていくという視点に変えるべきだということを私と同じ世代の人々に伝えたいと思います。ネットで交流することが普通である今だからこそ誰でも双方で協力して話し合い、作り上げられることでしょう。そうすることで発展途上国の人々も自分たちの力で実現できたと思えて他国依存しているかのような不快な気持ちにならなくて済むと思います。 
また、セミナーでは、発展途上国よりも日本のほうが先入観などに雁字搦めにされており、新たな革新的な技術が導入されにくいとありました。日本人は自分たちが先進国だと思って今の生活に満足してしまっています。そして、発展途上国の人々と自分たちとを相手の価値観を気にせずに区別し差別している傾向にあると思います。支援という言葉がその一例です。確かに発展途上国の生活や勉強面はまだまだ遅れており、誰かが何かしなければ苦しい生活が続いて行ってしまうことも事実です。だからこそ私は支援という存在が研究や実験などの双方の協力によってなりたつ必要があると思います。 
これらのことを伝えるためにはオンラインで現地と方々とつながり、日々の生活や価値観の違いを教え合い、互いに知ることがとても重要だと考えます。そして、それだけではなくコロナ禍が終わったらどのような人でも簡単に海外を訪れられるようにし、互いの文化の差を知ることでこれらのことがより伝わると思います。 


講評:羽場久美子氏
(青山学院大学名誉教授、神奈川大学教授、世界国際関係学会アジアパシフィック会長)

千葉さんの写真とご体験・鈴木さんのJICAの活動は素晴らしく、それに感動した学生さんたちの感想もとても良かった。一方、お送りいただいた多くのレポートが、水上スラム、マココを取り上げ、「アフリカは貧困と考えてきたが、考え方を改めねばならない」、という善意の記述で、ではあなたはどうする?というあと1歩の思索に至らなかったのは、すこし残念であった。青年のリーダーシップの感動的写真を取り上げた人も殆どなかった。若者・自分の役割、にさらに繋げられていたらなおよかった。

故に可能な限り、自分の頭で自分の言葉で自分の足元からオリジナルに考えた方の感想を選んだ結果、中学生のA.M.さんの論文となった。彼女は「支援」を、自分を上に見る立場ではいけないと批判し、「双方が話し合い協力して何かを作り上げていく」という視点を持つこと、「相手を区別し差別する」のでなく「研究や実験などの双方の協力によって成り立つ必要」を訴えている。とても中学生(17歳以下)の言葉とは思えず、主体性とオリジナリティが光っており、読みながら衝撃が走った文章でした。
是非彼女をはじめとする皆さんに、アフリカの友人たちと共に、多文化共生・多民族共存の世界を作り出していただきたい。
他にもすぐれた作品は多くあったが、一人ずつしか選べず申し訳ありませんでした。応募された皆さん一人一人が、世界の若者たちとともに、相互共感しつつ、未来を引っ張っていってほしいと願います。