【1月29日 AFP】中国で配信されている映画『ファイト・クラブ(Fight Club)』のエンディングが当局が勝利を収める形に改変されて物議を醸しているが、原作者によると、実はデヴィッド・フィンチャー(David Fincher)監督版よりも原作に近いという。

 中国の映画ファンは先週末、騰訊視頻(テンセントビデオ、Tencent Video)のストリーミングサービスで配信されている同作のエンディングが改変されていることに気付いた。『ファイト・クラブ』を世界的に人気のカルト映画に押し上げた、無政府主義的、反資本主義的なメッセージが変えられていたのだ。

 フィンチャー版では、エドワード・ノートン(Edward Norton)さん演じるジャックが、自身の分身であるブラッド・ピット(Brad Pitt)さん演じるタイラー・ダーデンを消滅させ、ビルが爆破される様子を眺める場面で終わる。この場面は、ジャックが目指していた近代文明の破壊を示唆している。

 中国版でもジャックはタイラーを消滅させる。だが、ビルの爆破シーンの代わりに画面が黒くなり、「警察は迅速に計画の全貌を突き止め、犯罪者全員を逮捕し、爆発を未然に防ぐことに成功した」というメッセージが流れる。続けて、ジャックの想像の産物であるはずのタイラーは治療のため「精神科病院」に入院させられ、後日退院したと説明される。

 一部の映画ファンは改変に憤慨し、中国当局の締め付けを非難した。

 しかし、1996年に発表された原作小説の著者、チャック・パラニューク(Chuck Palahniuk)氏は「皮肉なことに、中国版はフィンチャー版と違い、エンディングを原作とほぼ同じ形にそろえている」「だからある意味で、中国版は少し原作寄りに戻った」と米エンタメ情報サイトTMZで語った。

 パラニューク氏は、原作小説の国外版がフィンチャー版寄りに改変されていることもよくあるとした上で、「私はこの手の修正にずっと対処してきた。25年間も」と語った。(c)AFP