【1月22日 AFP】禅僧で平和活動家のティク・ナット・ハン(Thich Nhat Hanh)師が22日、ベトナム仏教の中心地・フエ(Hue)で死去した。95歳。同師は「マインドフルネス」を欧米諸国に紹介し、大きな影響を与えた。

 仏教界ではチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世に次ぐ影響力があるとされるティク・ナット・ハン師は、ベトナム戦争(Vietnam War)の終結を呼び掛けたことで祖国ベトナムを追放され、40年近くにわたり亡命生活を送った。

 2018年に帰国するまで、世界各地に道場を設け、マインドフルネスや瞑想(めいそう)に関する本を100冊以上執筆した。同師の著作は、米有名女性司会者オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)さんや米ニュースサイト「ハフィントン・ポスト(Huffington Post)」の創業者、アリアナ・ハフィントン(Arianna Huffington)氏、IT業界の富豪、マーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏らに支持され、世界中で4兆2000億ドル(約477兆円)規模にまで成長したウエルネス産業の礎となった。

 ティク・ナット・ハン師は1926年生まれ。1960年代初頭に米国の大学で教壇に立つ。1966年に訪米した際、公民権運動を主導した故マーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King Jr.)牧師と面会。ベトナム戦争終結の呼び掛けにキング牧師も加わるようになり、この後、ベトナムから帰国を禁じられた。戦争は根本的に誤りであるとの信条に基づき、南北ベトナムのいずれに対する支持も拒否。亡命中も、世界に向けて宗教の自由を呼び掛け続けた。

「行動する仏教」を提唱し、その一環として、ベトナム戦争終結後に祖国をボートで脱出した難民を800人以上救出した。(c)AFP