【1月13日 AFP】ブラジルのジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領は12日、国内で急速に広がる新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」を軽視する発言をした。さらにロックダウン(都市封鎖)の再導入を否定し、自然感染を通じての集団免疫獲得を擁護した。

 ブラジルは新型ウイルスによる死者数が世界で2番目に多く、専門家は医療体制の逼迫(ひっぱく)を警告している。

 しかし、ボルソナロ氏はガゼッタ・ブラジル(Gazeta Brazil)のインタビューで、「オミクロン株では誰も死んでいない」と主張した。

 中部ゴイアス(Goias)州の自治体がオミクロン株に感染した国内初の死者が確認されたと発表していたが、ボルソナロ氏はこの人物について、オミクロン株ではなく感染以前からの肺などの重い疾患が原因だったと述べた。

 専門家によると、ブラジルではすでにオミクロン株が主流になっている。

 ボルソナロ氏は、オミクロン株の感染力は強いが、これまでの変異株より死者数は少ないという暫定的なエビデンスを取り上げ、「(オミクロン株は)ワクチンウイルスだと言う人もいる。製薬業界に迎合しない賢明で真面目な人はオミクロン株を歓迎し、(新型ウイルスの)パンデミック(世界的な大流行)終息の先触れかもしれないと述べている」と主張した。

 世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイク・ライアン(Mike Ryan)氏はスイス・ジュネーブでボルソナロ氏の発言について問われると、「死をもたらすウイルスは歓迎できない。死や苦しみが避けられるならなおさらだ」と述べた。

 ブラジルのニュースサイト「UOL」によると、ライアン氏は「オミクロン株の重症化率が低くとも、症状が軽いわけではない」と続けた。

 ボルソナロ氏は、ブラジル経済はロックダウンの再導入に耐えられないと主張し、集団免疫を獲得するために感染を拡大させるアプローチを擁護。「集団免疫は現実的だ。新型ウイルスに感染して免疫ができた人は、ワクチンを接種した人より抗体の量が多い」として、「私が好例だ。ワクチンを接種していないが、すこぶる元気だ」と述べた。(c)AFP