【11月30日 AFP】中国とロシアの駐米大使が26日、異例の共同論説を発表し、ジョー・バイデン(Joe Biden)米政権主催の「民主主義サミット(Summit for Democracy)」を強く非難した。

 米国務省は23日、来月9~10日にオンライン形式で開催される民主主義サミットの招待リストを公表。約110の参加国・地域に台湾が含まれる一方、中国とロシアは含まれていなかった。サミットはバイデン氏の大統領選公約で、民主主義を結集して台頭する権威主義に対抗するのが狙い。

 中国の秦剛(Qin Gang)、ロシアのアナトリー・アントノフ(Anatoly Antonov)両大使は米保守系誌「ナショナル・インタレスト(National Interest)」のウェブサイトに寄稿。民主主義サミットについて、「米国の冷戦(Cold War)思考の産物なのは明らか」として、「世界でイデオロギーの対立と不和をあおり、新たな『境界線』を引く」ことになると批判した。

 両大使は「(民主主義は)さまざまな形で実現可能で、すべての国に適用できるモデルはない」として、「世界の多様な政治情勢を一つの物差しで判断する権利はどの国にもない」と述べた。

 さらに、共産主義の中国で「民意を反映させ、国の実情に合わせ、国民の強い支持を得ている全過程の人民民主主義」が機能し、非常にうまくいくことが証明されていると主張した。

 ロシアについては「連邦共和制を取る民主的な法治国家」で、議会には100年の歴史があると述べた。同国のウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は4月、2036年まで大統領の座にとどまることが可能とする法案に署名し、同法は成立した。

 両大使は米国を名指しすることはなかったが、民主主義を広めるという名目で始まった戦争や紛争は「地域や世界の平和、安全、安定を著しく損なう」と指摘。「ユーゴスラビア空爆やイラク、アフガニスタン、リビアへの軍事介入、『民主化』は有害無益だった」と述べた。

 両大使は最後に「各国は上から目線で他国を批判するのではなく、自国の問題に集中し」、互いに尊重、協力していくべきだと呼び掛けた。

 論説に台湾への言及はなかった。(c)AFP