【11月26日 東方新報】中国のインターネットメディア「澎湃新聞(The Paper)」の記者が、偽造酒を造る闇業者に覆面取材を行い、その実態を明らかにした。

 報道によると、記者は中国の代表的な電子掲示板(BBS)の一つ「百度貼吧(Baidu Tieba)」で「三大洋酒をお届け 品質とスピードで満足」と宣伝している業者を見つけ、中国版LINE「微信(ウィーチャット、WeChat)」で連絡を取った。業者は「ヘネシー(Hennessy)、マーテル(Martell)、レミーマルタン(Remy Martin)を扱っている。うちのは『レプリカ』と分かっているな?」と説明。偽造酒の造り方と価格を質問すると、「同じ銘柄の低価格帯の酒をブレンドする。酒によっぽど精通している人間以外には分からない」「ブレンドにも質があり、700ミリのヘネシーXOは店舗用なら450元(約8129円)、バー、ナイトクラブ、カラオケ店用は320元(約5780円)だ」と明かした。

 正規店では1650元(約2万9806円)で販売しているヘネシーXOを記者が400元(約7225円)で注文すると後日、広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)から荷物が届いた。外箱やボトル、ラベルが本物とまったく同じに見えるヘネシーXOが入っており、ボトルに記載されたQRコードをスキャンすると業者のウェブページにつながり、そこからヘネシーのウィーチャット公式アカウントにアクセスするようになっていた。

 記者は別の闇業者にも連絡を取った。業者は「35種類の洋酒と国産の白酒10種類をそろえている」「外箱やボトル、ラベルは本物で、別業者から仕入れている」と説明。造り方はやはり同じ銘柄の低価格帯をブレンドするという。記者が「微妙な味の違いで分からないか?」と尋ねても、「俺はこの商売を13年間やっている。そんな簡単にばれるなら、やっていけないよ」と答えた。中国の「国酒」といわれる貴州茅台酒(Kweichow Moutai)の偽造酒もある。最上級の飛天牌茅台酒の偽造酒は600元(約1万835円)と1100元(約1万9865円)の2種類があり、「どちらもボトルやラベルは本物だが、違いは開封口のキャップ。模造品はキャップの色合いや文字の間隔が微妙に異なる。素人には分からないがね」という。

 記者は飛天牌茅台酒(53度)の500ミリを660元(約1万1919円)で注文。正規品は1499元(約2万7071円)で、インターネットの公式サイトでは「在庫なし」となっている。届いた茅台酒は本物同様で、こちらも広州市から発送されていた。業者は記者に対し、「最近は取り締まりが厳しくなっているので、在庫は置かないようにしている。夜11時から朝5時まで倉庫で『作業』をして、すぐ発送している」とも明かしている。

 中国公安部は相次ぐ偽造品の取り締まりを続ける中、人の健康や生命に直結する食品・医薬品分野を重点的に摘発する「崑崙作戦」を展開。偽造酒もその一つとして全国の警察が取り締まっている。

 広東省公安局は今年に入り、偽造酒の生産・販売拠点計40か所を突き止めて容疑者79人を逮捕。洋酒、白酒、ワインなど計2万本を押収した。各グループの偽造酒の販売総額は計1億8500万元(約33億4103万円)に上るという。

 浙江省(Zhejiang)台州市(Taizhou)などの公安局は江蘇省(Jiangsu)、山東省(Shandong)、福建省(Fujian)にまたがるグループの容疑者13人を逮捕した。5つの生産アジトや8つの倉庫からはジョニーウォーカー(Johnny Walker)、ヘネシー、レミーマルタン、シーバスリーガル(Chivas Regal)などの偽造酒2万本や原材料、ボトルなど30トンを押収した。グループは取り締まりを逃れるために小さな農家を複数借りて偽造酒を製造し、周囲に監視カメラを設置し、番犬も飼っていたという。

 経済成長が続く中国では市民の可処分所得が増え、嗜好品の消費意欲が高まっている。高級酒の消費量も右肩上がりで、闇業者が「需要」を見込んで暗躍する状況が続いている。(c)東方新報/AFPBB News