【11月16日 AFP】宇宙ごみが大量発生し国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の宇宙飛行士が避難準備を余儀なくされた問題で、米国は15日、ロシアが人工衛星をミサイルで破壊する「危険で無責任な」実験を行ったと非難した。

 関係者によると、米政府は事前通知を受けておらず、同盟国と対応を協議するという。

 米国のアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官は「ロシアは無謀にも、直接上昇式の対衛星ミサイルで自国の衛星1基を破壊する実験を行った」と述べた。

 ブリンケン氏によると、この「危険で無責任な実験」で、追跡可能な宇宙ごみ1500個以上が軌道上で発生した。それよりも小さく追跡不可能な宇宙ごみが数十万個発生する可能性もある。

 宇宙ごみの発生を受けてISSに滞在する米国人4人、ドイツ人1人、ロシア人2人の飛行士7人は、緊急時の規定に従ってISSのハッチを閉じ、地球帰還用の宇宙船に避難した。

 米航空宇宙局(NASA)によると、飛行士は米東部時間午前2時(日本時間同日午後4時)にスペースX(Space X)の宇宙船クルードラゴン(Crew Dragon)とロシアの宇宙船ソユーズ(Soyuz)に避難し、約2時間待機した。

 ISSは約90分で地球を1周しているため、周回ごとに宇宙ごみの雲の中や近くを通過している。ブリンケン氏によると、危難は去っておらず、宇宙ごみは人工衛星やISSでの活動を脅かし続けるという。

 NASAのビル・ネルソン(Bill Nelson)長官は、長い有人宇宙飛行の歴史を持つロシアが他国の飛行士だけでなく自国の飛行士まで危険にさらそうとしたのは「とんでもないことだ」と非難した。

 宇宙産業分析企業セラデータ(Seradata)によると、標的になったのは旧ソ連時代の1982年に打ち上げられた「コスモス1408(Cosmos 1408)」で、数十年前に機能を停止していた。(c)AFP/ Issam AHMED