【11月11日 People’s Daily】中国科学技術大学(USTC)の研究チームはこのほど、超伝導量子と光量子の2種類のシステムの量子計算において重要な進展を遂げ、「祖沖之2号(Zuchongzhi-2)」と「九章2号(Jiuzhang-2)」の研究開発に成功した。これにより、中国は現在、2種類の物理システムにおいて一里塚となる「量子超越性(Quantum Supremacy)」を達成した世界で唯一の国となった。

 同大学の潘建偉(Pan Jianwei)氏、朱曉波(Zhu Xiaobo)氏、彭承志(Peng Chengzhi)等の研究チームは最近、中国科学院(CAS)上海技術物理研究所(SITP)と協力・作成した66ビットプログラマブル超伝導量子コンピュータのプロトタイプ「祖沖之2号」は、「ランダム量子回路サンプリングタスクの計算速度が、現在世界最速のスーパーコンピューターより1000万倍以上速い。

 同大学の潘氏、陸朝陽(Lu Chaoyang)氏、劉乃楽(Liu Naile)氏等の研究チームは中国科学院上海マイクロシステム・情報技術研究所(SIMIT)、国家並列コンピュータ工学技術研究センターと協力して、このほど113個の光子144パターンの量子コンピュータのプロトタイプ「九章2号」の作成に成功した。ガウシアンボソンサンプリング数学問題の計算速度は、現在世界最速のスーパーコンピュータより10の24乗倍(億億億倍)速く、量子コンピュータの開発の道に重要な一歩を踏み出した。

 スーパーコンピュータは、コンピュータの中で最も機能が高く、演算速度も速く、記憶容量も大きいコンピュータと考えられる。1981年にノーベル賞受賞者のリチャード・フィリップス・ファインマン (Richard Phillips Feynman)氏が量子コンピュータの構想を発表した。量子コンピューティングは次世代の情報革命の鍵となる技術と考えられている。「『量子超越性』とは、ある特定のタスク、あるいはある特定のコースに対し、現在のスーパーコンピュータを超えることだ」と、陸朝陽教授は述べた。

 大規模量子コンピュータの物理実装は、世界最先端の重要な課題の一つだ。このため、量子計算の物理実装について、国際学術界では3ステップのロードマップがとられている。このうち最初の一里塚は、学術的に「量子超越性」と呼ばれているものだ。

 現在、量子計算の超越性を実験的に示す2つの重要な方法は、超伝導ビットによるランダム量子回路サンプリングと光子によるガウシアンボソンサンプリングだ。この2つの案の最新の成果は、「祖沖之2号」と「九章2号」だ。

「体積的には、一つの部屋に設置できる大型の専用計算装置と考えられる」。両者の違いについて、陸教授は主に媒介の違いを挙げ、「超伝導量子計算は主に超伝導材料を媒介とし、光量子計算は主に光子を媒介とする」と説明した。

 量子超越性の実証に成功したことは、量子計算研究が発展の第2段階に入り、量子エラー訂正と近未来応用の探索が始まったことを意味する。「現在の量子計算の発展はまだ非常に初期の段階にあり、応用可能性がどれだけ広がるかを予測することは難しい。しかし現在のところ、われわれの計算能力を向上させることができ、多くの科学研究分野で役立つことが期待されている。例えば、医薬品設計、分子シミュレーション、暗号解読など」と、陸教授は述べた。(c)People’s Daily/AFPBB News