【11月4日 AFP】イタリア・フィレンツェ(Florence)にあるウフィツィ(Uffizi)美術館で、女性への暴力をテーマにした展覧会が開催されている。展示には、酸攻撃の被害に遭った女性を表現した写真や、恋人の顔を傷つけたことがある同国の彫刻家でバロック様式の巨匠ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(Gian Lorenzo Bernini)による胸像が含まれている。

 ベルニーニは1638年、恋人コスタンツァ・ピッコローミニ・ボナレッリ(Costanza Piccolomini Bonarelli)が自分の兄弟と浮気をしていたことを知り嫉妬に駆られ、使用人の一人にコスタンツァの顔を傷つけるよう頼んだ。

 ベルニーニにはわずかな罰金が科されただけだったが、コスタンツァは4か月間修道院に隔離された。

 ウフィツィ美術館のアイケ・シュミット(Eike Schmidt)館長は「美を求めてウフィツィを訪れるすべての人に、倫理なき美はあり得ないという事実に気付いてもらうことが目的だ」と説明した。

 シュミット氏は今回のコンテンポラリー展が「制度」と共に、「このような犯罪を実行するための言い訳を簡単に見つけられる人」の精神構造を変えることを期待すると語った。

 イタリア人写真家イラリア・サガリア(Ilaria Sagaria)氏による写真の女性たちは、頭全体を包帯で覆っている。

 サガリア氏はAFPの電話取材に対し、嫉妬に駆られた夫やパートナーの犠牲となった女性の証言を集め、モデルを使ってその物語を連想させるような写真を創ったと語った。

「全女性の話に共通点があった」とサガリア氏は言う。

「例えば、壁に掛かっていた鏡や写真を外したという事実は、かつての自分を思い起こさせる可能性のあるものはすべて取り除かなければいけないという女性たちの必要性を示している」

 サガリア氏は、イタリア人である「西側の女性」とインドやパキスタンなど「東側の女性」に話を聞いた。

 女性たちの「孤独」や「アイデンティティーの喪失」を思い起こさせるため、「身体的苦痛よりも心理的苦痛に重点を置きたかった」と語った。(c)AFP