【11月9日 AFP】米テネシー州のブルックさん(仮名)は昨年、交際相手との性行為中に恐ろしいことに気付いた。「コンドームを外されていた」のだ。

 当時28歳で学生だったブルックさんは、妊娠する可能性や性感染症が心配で、うつ状態になった。何よりも思い悩んだのは、「これは暴行ではないのか」ということだった。

 性行為中に相手の同意なしにコンドームを外すことを指す新語が「ステルシング」だ。

 レイプ被害に遭ったのも同然だと感じたブルックさんは、インターネットでさまざまな情報を検索した結果、「暴行の一種と呼んでいい」ことを知った。

 ブルックさんは長い間、立ち直れなかった。性行為の間も「パニック状態で、ストレスがとても強く」、コンドームが装着されているかどうか「常に」確認していた。

 だが、暴行の一種だと明確に示すことができれば、「それと向き合い、被害者に落ち度はないと理解できるようになります」とAFPに語った。

 米カリフォルニア州で最近、全米の州として初めてステルシングを禁止する法律が成立した。

 自らの経験を基に州議会に法案を提出したクリスティーナ・ガルシア(Cristina Garcia)議員は、被害者同士が支え合うオンラインコミュニティーの体験談から、ステルシングがまん延している実態を知り、これを禁止する法律が不可欠だと確信した。

 最初の法案提出から4年たった今年10月、ガルシア議員は、ついに大きな勝利を手にした。カリフォルニア州知事が、被害者の損害賠償請求を認める法案に署名した。

 全米の他の地域でも、同様の法律制定の試みがあるが、これまでに成功例はない。

 2017年にウィスコンシン州議会でステルシング防止法案を提出したメリッサ・アガード(Melissa Agard)民主党議員は、立法関係者には男性が多いため、この問題が「一蹴される」傾向があると訴える。