【10月20日 AFP】五輪の体操男子、個人総合で連覇を達成しているレジェンドの内村航平(Kohei Uchimura)が、この夏の東京五輪で2冠を達成した日本体操界の新たなキング、橋本大輝(Daiki Hashimoto)に対して、橋本は橋本という一人の選手だから、自分との比較には耳を貸す必要はないとアドバイスを送った。

 橋本は20歳の誕生日を迎える直前に臨んだ初めての五輪で、個人総合と鉄棒の金メダルを獲得して自らの存在を華々しく世界へアピールした。

 内村は肩の負傷で東京大会の個人総合は回避したが、2012年ロンドン五輪と2016年リオデジャネイロ五輪のこの種目を連覇している内村の後に金メダルを取ったことで、橋本は当然ながら「キング」内村と比較される立場に置かれている。

 しかし内村は、橋本を一人の独立したチャンピオンとみなすべきだと考えており、またこの先に輝かしい現役生活が待っていると信じている。

 内村は「僕とかなり比べられると思うんですけど、そこは気にしないで、橋本大輝は橋本大輝の道をしっかり体操で示していってほしいなと思います」と話した。

 橋本と内村は現在、北九州市で開催中の第50回世界体操競技選手権(50th FIG Artistic Gymnastics World Championships)に出場している。初の世界タイトルを狙う橋本は、20日午前に行われた予選で堅実な演技をし、個人総合の暫定トップに立った。

 橋本は「五輪チャンピオンとして臨む試合になったが、そこはプライドを捨てて、でもその自信をもって取り組もうと思っていたので、そこはよかったと思います」とコメントした。

 一方の内村は、4個目の五輪メダルを目指した東京では得意の鉄棒に絞って出場したが、落下して決勝に進めないという悔しい結果に終わった。その雪辱を期す今回の世界体操も、鉄棒のみを戦う。

 内村は五輪について「悔いしかないですね。でも、その悔いが残ったからこそ、きょうここでしっかり演技ができていると思うので、それを考えると、あの失敗はなくてはならなかったのかなと思っています」と明かした。

 内村は、ロンドン五輪からリオ五輪にかけての時期に世界体操の個人総合でタイトルを総なめにし、男子では史上最高の体操選手と広くみなされるようになった。それでも輝かしいキャリアは残り少なくなっており、中には故郷の北九州で行われるこの大会限りで、現役生活に幕を下ろすのではないかと予想する人もいる。

 本人は「まだ考えていないですね。大会が終わらないと分からないですけど。大会終わってどう思うかによって、そういう答えが出るかもしれないし、まだやりたいという気持ちが出てくるかもしれない」と話している。

 一方で橋本は「僕はすごく憧れていた。そういう人との勝負が東京五輪ではできなかったが、今回の世界選手権は母国開催でできるので、2人で盛り上げて、最後にいい試合ができたらいいなと思います」とコメントした。(c)AFP