【10月19日 東方新報】中国政府が9月に新設を表明した北京証券取引所が、早ければ10月中にスタートする。中国本土では上海市、深セン市(Shenzhen)に続く3か所目の取引所となる。米中対立の長期化が続く中、国内証券市場を拡充する方針だ。

 習近平(Xi Jinping)国家主席は9月2日、北京で開幕した「中国国際サービス貿易交易会」のビデオ演説で、「北京証券取引所を設立し、サービス・イノベーション型中小企業の主要拠点とする」と表明した。中国証券監督管理委員会によると、現在の中小企業向け店頭市場「新三板」を拡充する形で新市場を設立。雇用の80%を担う中小企業のてこ入れを図る。北京市内にはIT・ハイテク分野のベンチャー企業が集まり「北京のシリコンバレー」と呼ばれる中関村(Zhongguancun)もある。

 9月中旬には、個人投資家の参入条件は証券資産50万元(約887万円)、機関投資家にハードルは設けないと方針が表明され、9月下旬から証券会社や金融会社、ファンドが参加する大規模な模擬取引を開始。市場参加者が技術的に取引開始の準備が整っているかを確認した。北京南山投資有限会社の創業者、周運南(Zhou Yunnan)氏は中国メディアの取材に「10月末の取引開始に向けて、カウントダウンの段階に入った」と見通しを語った。

 これまで中国のIT・ハイテク企業は米市場へ上場して資金を調達し、急成長を遂げてきた。しかしここ数年は米中対立の激化から米政権が中国企業の上場を相次ぎ制限している。取引所の新設は「米国依存」を脱却し、国内の金融市場を自立、強化する狙いがある。また、中国では最近、IT企業や民間の教育企業に対する規制も進めている。首都・北京に証券取引所を設立し、望ましい上場企業のモデルを提示しようとしているとも考えられる。

 中小企業への投資は当然、リスクも伴う。急成長する可能性を秘めたスタートアップ企業や、もう少しで上場基準を満たす優良企業を見抜き、あと一押しするという「目利き」が投資する側に問われる。米国はその人材、資金量ともに豊富だ。北京証券取引所の成功の鍵は国内の証券市場活性化と同時に、どれだけ人材を育成するかにかかっている。(c)東方新報/AFPBB News