【10月14日 東方新報】中国で8月以降、不動産市場が急激に低迷している。コロナ禍の中で高騰した不動産価格を当局が抑制しようとしている。

 国家統計局によると、中国で1~7月の住宅販売額は前年同期比30.7ポイント増を記録したが、8月はマイナス18.7%と急落。「2008年のリーマン・ショック以降で最悪」と言われるようになった。

 特に下落が目立つのは、価格上昇が続いていた中古住宅市場だ。全国主要50都市の8月の中古住宅の取引件数は20ポイント減少し、35都市で中古住宅価格指数が減少した。不動産価格が大きく下落している山西省(Shanxi)太原市(Taiyuan)ではすでに契約が完了しているマンションの工事が停止したり、建物の引き渡しが延期されたりしている。駐車場の取引価格は「白菜並み」といわれるほど下がっている。

 中国共産党中央政治局は7月末、今年下半期の経済運営をめぐる会議で「不動産価格を安定させる」と従来にない表現を方針に盛り込んだ。地方政府は、中古マンションの「参考価格」を作って価格を事実上統制し、マンション購入を許可制にするなど、さまざまな規制を始めた。

 中国では不動産市場はたびたび「景気浮揚策の裏ワザ」に使われる。規制を緩めて取引を活発化させれば、税金を投入しなくても経済を刺激できるためだ。この手法は健全な経済政策とはいえないため、共産党政治局は2019年7月には「不動産を短期の経済刺激策に使わない」と決めた。だが、2020年にコロナ禍が始まり製造業や観光業などが低迷すると、不動産へ投資が集中。不動産価格が高騰して市民からは「いくら働いても一生、家が買えない」と不満が高まっており、当局が不動産市場の過熱化にブレーキをかけた形だ。

 一方で、リーマン・ショック以来といわれるほどの取引低迷や不動産大手の恒大集団(Evergrande Group)の債務危機が中国経済に打撃を与えることが不安視されてきている。そんな中、中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)の金融政策委員会は9月24日に開いた四半期定例会合で、「不動産市場の健全な発展を守る」方針を表明。中国人民銀行は国内の主要銀行を集めた9月29日の会議でも「不動産を投機対象としない」と重ねて強調した。あくまで不動産市場の過熱を抑えながら、経済全体や金融システムへの影響を防ぐ狙いだ。

 経済アナリストの王静文(Wang Jingwen)氏は「中央銀行の声明には『住宅は保護するが、企業は保護しない』というシグナルが表れている」と指摘。今後もマイホームに手が届くよう市民の権益を守り、不動産市場の健全化が優先されると分析している。(c)東方新報/AFPBB News