【10月13日 AFP】イスラエル東部にある死海(Dead Sea)沿岸のローマ帝国時代の遺跡から採取された2000年前のナツメヤシの種子を、サラ・サロン(Sara Sallon)氏(72)が栽培しようと思い立った時、植物考古学の専門家には鼻で笑われた。

「研究者たちには、『正気とは思えない。うまくいくはずがない』と言われました」と、英国系イスラエル人で自然薬を研究しているサロン氏はAFPに語った。

 しかしサロン氏は、死海特有の乾燥し切った環境が功を奏して、種から芽が出るのではないかと考えた。その予想は的中した。

 種子は1960年にマサダ(Masada)要塞(ようさい)の遺跡で見つかった。マサダは、紀元1世紀にユダヤ人がローマ軍との戦いで山上にとりでを築いて立てこもったことで有名だ。

 サロン氏とプロジェクトを進めた持続可能な農業の専門家、エレイン・ソロウェイ(Elaine Solowey)氏(68)は、辛抱強く、細心の注意を払って、ナツメヤシをその種から育てることに成功した。

 サロン氏率いる研究チームは、米科学誌サイエンス(Science)に昨年掲載された論文の中で、古代ユダ(Judah)王国はデーツ(ナツメヤシの実)の産地として有名で、このデーツは大きくて甘く、薬効があるとして当時、珍重されていたと記している。

 サロン氏は、古代の植物の種をよみがえらせるプロジェクトは、新奇な試みというだけではなく、気候危機や種の大量絶滅に直面している地球に「希望の光」を与えてくれたと話す。

「ひょっとすると、私たちの周りにある素晴らしい種は、絶滅しないのかもしれません」として、自然には「いざというときの奥の手がいくつかある」のかもしれないと言う。

「何千年も休眠し、絶えてしまったのだと思われていた種が突然パッとこんなふうによみがえるんです。エレインのような黄金の手の助けが必要なわけですが」