【10月6日 東方新報】中国各地で電力不足が深刻化しており、市民生活や工場の操業に大きな影響を与えている。

 中国東北部の遼寧省(Liaoning)、吉林省(Jilin)、黒竜江省(Heilongjiang)では9月下旬、相次いで電力供給制限が行われた。道路の信号が消えて交通渋滞が発生し、集合住宅のエレベーターは停止し、断水も起きた。停電は断続的に繰り返され、各地の市民がロウソクや懐中電灯を求めてスーパーなどに駆け込む騒ぎとなった。

 製造業が盛んな東部の江蘇省(Jiangsu)や浙江省(Zhejiang)、南部の広東省(Guangdong)では電力供給制限で工場の操業停止が相次いだ。日本貿易振興機構(JETRO)広州事務所によると、広東省だけで自動車関係など約180以上の日系企業が影響を受けた。米アップル(Apple)やテスラ(Tesla)関連の工場も生産が混乱しているという。

 電力不足の主因は石炭不足だ。中国はエネルギーの3分の2を石炭でまかなっているが、炭鉱事故続発による安全基準の強化により石炭の生産が鈍っている。外交上の理由で、最大の石炭輸入国であるオーストラリアからの輸入を禁止したことも大きく作用した。石炭価格は過去最高値まで上昇し、電力会社は発電すればするほど赤字になる状態とまでいわれている。

 二酸化炭素(CO2)削減に向けた環境対策の強化も電力供給を抑える要因となっている。国家発展改革委員会は8月、エネルギー消費削減目標のノルマを達成できていない省・自治区を指摘。名指しで批判された江蘇省や広東省などは電力供給を一気に制限した。省政府から直接、電力使用量を制限するよう指示されている企業もあり、生産を減らした上に空調も止める涙ぐましい努力をしている工場もある。

 中国は2018年で世界のCO2排出量の約28%を占めており、米国の約15%、日本の約3%と大きな差がある。習近平(Xi Jinping)国家主席は昨年9月、国連総会のオンライン演説で2060年までにカーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)を達成すると宣言。中間目標として2030年にはピークアウト(排出量減少)を実現する方針だ。来年2月開催予定の北京冬季五輪では、世界に向けて「青く澄んだ空」を見せ、低炭素社会実現を目指す姿勢をアピールしたい考えがある。

 ただ、大規模な電力供給不足はサプライ・チェーン全体に影響を与え、投資や消費が冷え込む要因にもなっており、バランス良いかじ取りが求められている。(c)東方新報/AFPBB News