【9月25日 東方新報】中国で就職活動中の大学生らを対象にした「履歴書最適化サービス」というビジネスが増えている。

 中国では一般的に履歴書のフォーマットはない(日本のような定形の書式がある国の方が珍しい)。ある有名企業の人事担当者は「1枚の履歴書に目を通す時間は15秒」と話しており、履歴書の作成段階から就職活動は本番となる。中国メディアが大学生1534人に尋ねたアンケートによると、「履歴書の作成に悩んでいる」と答えた人が71.2%、「サポートが必要」が93%、「成功した先輩に経験談を聞きたい」が76.5%に上った。

 中国で2021年の大学卒業者は909万人と過去最高を更新したが、学生の就職希望先と企業側とのミスマッチが激しく、大学生の就職難は社会問題となっている。そこでインターネットでは「履歴書最適化サービス」というウェブサイトが乱立。100~200元(約1700~3380円)から1000元(約1万7000円)の料金で、インターンシップの経験や資格、自分のセールスポイントなどの書き方をアドバイスする。

「最適化サービスのおかげで希望の会社に就職できた」という声もあるが、最近問題となっているのは、履歴書に水増しや誇張、偽造を勧めるサイトが少なくないことだ。特にインターンシップの内容でその傾向が目立つ。中国は日本のように総合職を募集することは少なく、即戦力を求めるジョブ採用が多い。例えば外国語学部出身なら入社と同時に通訳ができる能力を求められる。そのため、在学中のインターンシップ経験が重視され、履歴書に内容を「盛る」ケースが目立つ。だが、それで内定をもらえても企業側の事前調査で虚偽が判明して内定が取り消されたり、就職後に業務内容についていけず会社にとどまれなかったりする人も多い。

 また、「人事のプロが履歴書を最適化します」と宣伝しながら、実際は大学生のアルバイトがマニュアルに沿って履歴書を作成するだけの業者もあるという。「何の変哲も無い履歴書がメールで送られてきただけだった」と怒りを訴える学生も少なくない。

 あるベテラン就職アドバイザーは「履歴書を作る以前に、学生と何度も話し合い、自分に向いている職業が何かを考えさせることが重要です。その上でアピールできる部分や足りない部分を整理して、履歴書を作成しないと意味がありません」と話す。

 中国では近年、「智商税(IQ税)」という言葉が使われている。知識や判断力が乏しい人が損をして社会を学ぶ「勉強代」という意味で、就職業界の識者は「履歴書最適化サービスに安易に飛び付く学生は、智商税を払っているだけだ」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News