【9月11日 AFP】米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は10日、米国がアフガニスタンで撤退前に行った最後の攻撃で、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員と間違えて支援団体職員を標的にした可能性があることが映像分析で明らかになったと報じた。

 米国防総省は米軍が撤退を完了する前日の8月29日、無人攻撃機「リーパー(Reaper)」による空爆で、ISが計画していた攻撃を阻止したと発表した。その数日前には、イスラム主義組織タリバン(Taliban)が制圧したアフガンからの脱出を試みる群衆が殺到した首都カブールの空港付近で、爆弾攻撃が起きていた。

 しかし、カブール在住のアイマル・アフマディ(Aimal Ahmadi)さんはAFPに対し、米軍最後の攻撃によって兄や幼い娘、おい、めいら民間人10人が死亡したと訴えた。

 アイマルさんによると、兄のエズマライ・アフマディ(Ezmarai Ahmadi)さんが帰宅し、駐車した車に子どもらが乗り込んだところに飛来したミサイルが直撃した。

 ニューヨーク・タイムズ紙は防犯カメラの映像を分析。エズマライさんと同僚が、欧米の支援を受けた政権の崩壊後に供給不足に陥った水を車に積み込んだり、上司のためにノートパソコンを積んだりしているところを米軍が確認していた可能性があると指摘した。

 遺族によると、エズマライさんは米カリフォルニア州を拠点とする支援・ロビー団体「ニュートリション・アンド・エデュケーション・インターナショナル(Nutrition and Education International)」の電気技師で、多くのアフガン人同様、米国への移住を申請していた。

 米当局は、無人機攻撃による爆発の後に2度目の大爆発が起きたのが、車内に爆発物があった証拠だと主張している。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙の調査によると、付近にあった門がへこんでいる他には、2度目の爆発があったことを示す明確な証拠はない。

 アイマルさんは先に、民間人10人が死亡したとAFPに明かしていた。一方、米当局は民間人3人の死亡しか認めず、無人機攻撃で新たな攻撃を阻止することができたと主張している。

 米国防総省のジョン・カービー(John Kirby)報道官はこの報道を受けて、米中央軍(CENTCOM)が無人機攻撃について「評価中」だとして、「民間人の犠牲を防ぐために、われわれ以上に努力している軍はない」と述べた。

「(マーク・)ミリー(Mark Milley)統合参謀本部議長が述べたように、今回の攻撃は確かな情報に基づいており、空港やそこで活動する米国人に対する差し迫った脅威を防ぐことができたと考えている」

 ニューヨーク・タイムズ紙はISが犯行声明を出した8月30日のロケット弾攻撃について、エズマライさんの車に似た車から行われたと記している。

 米ブラウン大学(Brown University)が4月に実施した調査によると、2001年9月11日の米同時多発攻撃後に米国が開始した対テロ戦争を直接の原因として死亡した民間人の数は、アフガンとパキスタンで7万1000人を超えているが、特にドナルド・トランプ(Donald Trump)前米大統領が2017年に交戦規定を緩和して以降、激増している。(c)AFP