【9月8日 AFP】画家で2人の子を持つアフガニスタン人女性、フレシュタ(仮名)さん(33)は自宅に身を潜めている。外国軍の元通訳で、ジョンの愛称で呼ばれていたアフガン人男性は、頻繁に居場所を変えている。ジョンさんのような外国軍への協力者を、イスラム主義組織タリバン(Taliban)は一軒ずつ捜し回っているという。

 20年の駐留を終えて米軍が完全撤退した現在、アフガン人は欧米諸国に必死に訴えている。国内に取り残され、タリバンに命を狙われるのを恐れている自分たちのことを忘れないでほしいと。

 各国政府はカブールの空港から国外退避を希望する人々のために航空便を手配したが、フレシュタさんは乗れなかった一人だ。

 フランスが手配したフライトに搭乗しようとしたのは、空港で100人以上が死亡した自爆攻撃の2日前だった。

 生後5か月の赤ん坊と5歳の娘を連れて長時間待ったが、空港周辺の混乱に緊張し、タリバンの戦闘員の発砲におびえ、やむを得ず、家に引き返した。

■「見て見ぬふりをしないで」

 現在、フレシュタさんはカブールの自宅に身を潜めている。

「20年かけて私たちはこの国を、一つの国家にしよう、進歩させようとものすごく努力しました」とAFPに電話で語った。

「私たちが伝えたいのは、アフガニスタンを出る手段を持たない罪なき人々のことをどうか考えてください、ということです」として、「私たちの状況を見て見ぬふりをしないでほしい」と訴えた。

 フランスを拠点とする芸術家や文化人らは、フレシュタさんを含め、複数のアフガン人に支援の手を差し伸べている。

 フレシュタさんは、他国がタリバン政権を承認すれば、「私たちの状況はこれから悪化する」と言う。「他国の人々は、私たちの声に耳を傾けるべきです」

 今、買い物は親類に頼み、行動を最低限に抑えている。なおかつ、全身を覆う「ブルカ」を必ず着用するようにしている。

「そうしないと、危険なんです。私はアーティストとして、いろいろやってきたので」

 タリバンは、自分たちのイデオロギーに反対する国民を排除することはないと約束しているが、フレシュタさんは警戒を緩めていない。「タリバンのことは信用できません」と言う。「言っていることと、やっていることが全然違います」

 20年にわたる混沌(こんとん)が続くアフガニスタンの状況は、フレシュタさんの絵に反映されている。

 これまで国を出たいと思ったことはなく、個展やその他のプロジェクトで忙しくしていた。しかし、タリバンの政権復帰が迫り、インドへ逃れようと決心した。だが、あまりにも急な首都カブールの陥落で計画はついえた。