【8月23日 AFP】イスラム主義組織タリバン(Taliban)に護衛されてアフガニスタンの首都カブール北部の国際空港に向かうバスの車列は、乗せてほしいと必死に訴える人々の前を通り過ぎていった──。バスの車内から見た心の痛む光景について、国外に退避予定のアフガン人らが22日、AFPに語った。

 米軍による退避作戦が続く中、空港周辺には国外脱出を希望する数万人の市民が集まり、混乱が広がっている。

 バスは22日早朝にカブール繁華街のホテルを出発した。乗っていたアフガン人ジャーナリストによると、空港近くの交差点では大勢が野営していた。ほとんどが路上に野ざらしの状態で寝ていたという。

 タリバンが制圧した地域と米軍の管理する空港の敷地を隔てる有刺鉄線で囲まれた非公式の緩衝地帯は、退避便への搭乗にいちるの望みをかける家族連れでごった返し、アフガニスタン特殊部隊の残存兵が米軍を支援していた。

「私たちの車列を見るなり、人々は起き上がり、バスに向かって走ってきた」と記者は語った。皆、パスポート(旅券)などの書類を見せてきたという。「妻子を連れた男性が私の座っている窓際に来て、かざしたパスポートを振りながら『英国のビザ(査証)を持っているが、中に入れない。どうかバスに乗せてくれ』と言った」

 タリバンが国外退避を試みるアフガン人らを妨害したり拘束したりしているとの報道もあるが、この記者は「彼ら(タリバン)は、私たちのことを気にしていなかった」と話した。乗っていたバスが空港に到着するまで、問題はほとんど起きなかったという。

「誰もが、国外に退避する理由を持っている」と記者は言った。「ジャーナリストもいれば、女子大学生もいる。…それから、外国人に協力していた人たちも」

 バスで空港にたどり着くことができた人々は、今度は欧米諸国への退避便に搭乗する順番を待つことになる。退避は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、カタールの隔離キャンプを経由して行われる。

 妻と幼い子ども4人を伴ってバスに乗った男性は、「子どもたちは疲れ切って泣いている。でも、あと少し頑張れば飛行機に乗れて、そうすれば助かると言い聞かせている」と語った。(c)AFP