【7月7日 AFP】インド映画界「ボリウッド(Bollywood)」で最も尊敬を集めるベテラン俳優の一人、ディリップ・クマール(Dilip Kumar)さんが7日、亡くなった。98歳。ボリウッドや政界から別れを惜しむ声が相次いでいる。

 クマールさんはデーブ・アナンド(Dev Anand)さんやラージ・カプール(Raj Kapoor)さんとともに、1940~1960年代のインド映画黄金時代を代表する三大俳優とされている。50年以上のキャリアで、60本近い作品に出演した。

 影のある美しい顔立ちと乱れた髪、低い声から「悲劇王(Tragedy King)」とも呼ばれたクマールさんは、当時のインド映画界で最も商業的成功を収めた複数の作品で主役を演じた。

 しかし、デヴィッド・リーン(David Lean)監督の1962年の名作『アラビアのロレンス(Lawrence of Arabia)』のアリ首長(Sherif Ali)役を断ったことで、国際的に有名となる機会を逃したことはよく知られている。アリ首長役は、当時無名だったエジプト人俳優、オマー・シャリフ(Omar Sharif)さんが演じた。

 クマールさんは1922年12月11日、当時英領インドだったペシャワル(Peshawar、現パキスタン)で生まれ、ムハンマド・ユスフ・カーン(Mohammed Yusuf Khan)と名付けられた。

 代表作に、ムガル(Mughal)帝国の一人の王子の人生を基に描かれた華麗な歴史ロマンス『偉大なるムガル帝国(Mughal-e-Azam)』がある。

 インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相はツイッター(Twitter)で、クマールさんを「映画の伝説」と呼んだ。

「比類なき才能に恵まれていた(中略)その死はわれわれの文化にとっての損失だ」 (c)AFP