【6月10日 東方新報】中国でアイスクリームの消費が急激に増えている。中国飲食産業協会によると、市場規模は2014年の708億元(約1兆2118億円)から2019年には1380億元(約2兆3620億円)と倍近くに増え、世界一のアイス市場となった。

 中国では近年、SNSから火が付く「網紅商品(ネット人気商品)」が増えており、アイスはその代表例となっている。ちょっと変わった味わいで、デザインが「映える」アイスが話題を呼んでいる。

 2019年に大ヒットしたのが、卵の黄身を使いアイスクリームで覆った「咸蛋黄雪糕(塩漬け卵アイス)」。アイスとケーキの中間のような新しい食感と見た目のかわいさから大ブームとなった。また、アイスもコーンも黒一色のココナツ風味「椰子(ヤシ)灰アイス」もブレークした。椰子殻活性炭を使い、香料や着色料を一切使っていないことを「黒」を通じてアピールしたのが人気となった。

 観光名所や地方の名産とタイアップしたアイスも花盛りだ。北京市・故宮故宮(Forbidden City、紫禁城)にある彫刻・石獅子をかたどった「瑞獣アイス」、円明園の「ハスの花アイス」、西安市(Xi’an)の「兵馬俑(へいばよう)アイス」、四川省(Sichuan)の3000年前の遺跡にちなんだ「黄金仮面アイス」、湖南省(Hunan)名物の「臭豆腐(豆腐に発酵液をつけた加工品)アイス」、鍋の形をしてバニラの中にノリやニンジン、ネギを入れた「東北鉄鍋アイス」など枚挙にいとまがない。現地を訪れた観光客がアイスを買ってSNSにアップするのが定番となっている。

「珍アイス」も一種のブームとなっている。ビターチョコに甘い麦芽糖を入れた「黒ビールアイス」、カニやイカの「シーフードアイス」、辛さが売り物の「チリペッパーアイス」などなど。バニラ味をベースにしているものが多いため「完全なハズレ」は少なく、変わったパッケージやデザインから「試しに買ってみよう」という気にさせている。

 こうしたアイス人気に伴い、価格も上昇している。アイスと言えば1個1元(約17円)で子どもも買える手軽なおやつだったが、10元(約171円)や20元(約342円)は当たり前。50元(約855円)を超えるアイスも珍しくなくなった。「スーパーや商店で、一桁(10元未満)で買えるアイスがなくなっている」と言う声が聞こえるようになった。

 奇抜なアイスが増えて「来年には無くなっているのは確実」と言われる商品も少なくない。ただ、中国の1人あたりのアイス消費量は欧米に比べるとまだまだ少なく、アイス市場は右肩上がりが予想されるため、今後も新たな「独特の味で映える」アイスが登場していきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News