【6月9日 東方新報】日進月歩で技術が進歩し、ライフスタイルが変化していく中国。大人用と遜色のないキッズ向けスマートウオッチが流通し、10歳未満の子どもがスマートウオッチを使うことが当たり前となってきている。

 北京市の幼稚園に通う6歳の女の子、周ちゃんはスマートウオッチが手放せない。お友達との通話、ゲームや音楽、グループチャットで「○○で集まって遊ぼう」と約束…。街角で見かけた樹木を撮影すると、木の名前もスマートウオッチが教えてくれる。電子マネーの機能もある。周ちゃんは「すごく便利でお勉強にもなるの」と笑みを浮かべる。

 周ちゃんの母親は「スマートウオッチにはGPS(衛星利用測位システム)機能が着いているので、子どもの姿を見かけなくなっても以前のように大あわてすることがなくなりました。スマートウオッチの機能を使っているうちに、娘の口から新しい単語や表現が出てくるようになりました。1000元(約1万7100円)は安い買い物でした」と話す。

 中国メディアによると、2020年のオンライン市場でキッズ向けスマートウオッチは368種販売されており、全体のスマートウオッチの売り上げの32%を占めた。小学校では3~4年生になると、クラスのほとんどの児童がスマートウオッチをつけている光景は当たり前となってきている。キッズ向けスマートウオッチに特化したメーカーも多く、「2010年代生まれ」をターゲットにした市場は拡大する一途だ。

 それとともに問題も浮上している。

 子どもが「スマートウオッチ漬け」となり、幼いうちから近視になったり、スマートウオッチを手放さなくなったりしている。周ちゃんの母親も「スマートウオッチで連絡できる友達とだけ遊んで、近所の公園に出かけて知らない子どもと触れ合う機会はなくなりましたね。娘を旅行に連れて行っても、ホテルでずっと時計をいじっている」とデメリットを話す。

 スマートウオッチには、学校に通っている昼間は使用できなくする設定やアクセス制限などの機能があるが、使い方に慣れた子どもが勝手に解除してしまい、授業中に隠れてゲームをしたり、わいせつな画面につながってしまったりする問題が起きている。

 また、親は「GPSで子どもの居場所が分かる」という安全面から子どもにスマートウオッチを買い与えることが多いが、逆にそれが危険を招く可能性がある。子どもが「お友達を増やしたい」と無邪気に考えて知らない人間とつながったり、写真撮影などで自分の居場所を特定しやすくしたりして、犯罪に巻き込まれる恐れが指摘されている。

 中国教育部は、小中学校にスマートフォンを持ち込むことを禁止するか学校が保管するなどの対策をとるよう提言しているが、「スマートウオッチについても同様の対策をとるべきだ」と求める声が出ている。(c)東方新報/AFPBB News