【6月8日 AFP】米食品医薬品局(FDA)は7日、アルツハイマー病治療薬「アデュヘルム(Aduhelm)」を承認したと発表した。アルツハイマー病治療の新薬承認は米国では18年ぶり。同病関連の認知機能の低下に対処する初の根本治療薬となる。

 同薬は承認への期待が大きかった一方で、その効果をめぐっては議論も起きていた。FDAが招集した独立専門家委員会は昨年11月、利益を示す証拠が不十分だとして、承認に反対していた。

 FDAのパトリツィア・カバゾニ(Patrizia Cavazzoni)氏は「アデュヘルムは、アミロイドベータプラークの存在という、アルツハイマー病の根底にある病態生理に対する初の治療薬だ」と述べた。

 アデュヘルムは今回、FDAの「迅速承認」を受けた。これは、既存の治療法よりも有意な利益をもたらす可能性があるものの、不確実な部分も残る医薬品を承認する制度。カバゾニ氏も、アデュヘルムの効能については専門家の間で「異なる見解」が出ていることを認めた。

 アデュヘルムは静脈内注射で投与するモノクローナル抗体で、一般名「アデュカヌマブ」としても知られる。末期のアルツハイマー病患者を対象に第3相試験が2回実施され、うち1回で認知機能低下の抑制がみられたが、もう1回では効果がみられなかった。しかし全ての試験で、アルツハイマー病の原因となるアミロイドベータと呼ばれるタンパク質の脳内蓄積を抑えられるとの確かな結果が出た。

 米国で前回アルツハイマー病治療薬が承認されたのは2003年。従来の薬は全て、病気の根本原因ではなく、関連症状に対処するものだった。

 アルツハイマー病は、認知症の最も一般的な原因疾患。患者数は世界で5000万人に上り、発症年齢は65歳以上であることが多い。(c)AFP/Issam AHMED