【6月5日 東方新報】中国・甘粛省(Gansu)白銀市(Baiyin)で5月22日に開かれた100キロ・クロスカントリーマラソンで、悪天候のため参加者21人が死亡した。安全管理を怠った主催者への批判が上がると同時に、ここ数年で急激に増えているマラソン大会の「もうけ主義」を指摘する声が出ている。

 白銀市の山岳地帯を走るクロスカントリーマラソンには172人が参加。レースが始まった午前中は晴天だったが、昼ごろ天候が悪化した。冷たい雨や雹(ひょう)が降り、さらに「両手で地面をつかまないと吹き飛ばされる」ほどの強風が吹き、低体温症や体調不良を訴えるランナーが続出。一部のランナーと連絡が取れなくなり、大会は中止となった。

 白銀市は23日朝、「調査チームを立ち上げ原因を追及する」と表明したが、多くの参加者がTシャツや短パンという軽装で参加していたことが分かっている。国営中国中央テレビ(CCTV)は、今回の事故が「中国全土で盛んとなっているマラソン大会への警鐘」であり、「コースの設定、医療態勢の整備、緊急時の救助などに万全を期すべきだ」と指摘している。

 中国では近年、生活が豊かになった中流層を中心に爆発的なマラソンブームが起きており、国民の健康維持のため政府も奨励している。中国では過酷なトレイルランから短距離のランニング大会まで全部「マラソン大会」にくくられるが、中国陸上競技協会によると、中国全土のマラソン大会は2014年の51回から2019年には1828回と信じられない「猛スピード」で増えている。

 その一因は、マラソン大会が「もうかる」ことにある。中国メディアによると、マラソン大会は自治体の補助金、ランナーの登録料、スポンサー料が入り、利益率も高くて大会平均で400万元(約6883万円)の粗利が見込めるという。企業統計によると、中国には31万7000社のスポーツイベント関連企業があり、その6割近くが最近の3年間で設立された。「もうけ第一、安全第二」という意識でマラソン大会を運営する「にわか業者」も含まれているようだ。

 ただ、外交学院体育学部部長で国際的陸上審判員の資格を持つ王莉(Wang Li)氏は「中国のマラソン大会の数は大幅に増加しているが、総数はまだ米国や日本には及ばない」と話す。華南師範大学(South China Normal University)スポーツ科学部の譚建湘(Tan Jianxiang)教授も「マラソン大会が多すぎるのではなく、質の高いイベントが不十分であることが問題だ」と指摘する。中国のトップレベルのマラソン大会は運営環境が整っており、2019年にはワールドアスレチックス(World Athletics)の格付けで「ゴールドラベル」レースの大会数は世界1位となっている。

 譚教授は「マラソン大会を運営するスポーツイベント会社の参加基準を早急に策定し、トレイルランのような大会では安全管理を徹底することが必要だ」と語っている。(c)東方新報/AFPBB News