【4月19日 AFP】フランスで8歳の女児が祖母の家から連れ去られ、誘拐事件として捜査していた仏当局は18日、隣国スイスで母親と一緒にいた女児を保護し、犯行に関与した疑いで母親を逮捕したと発表した。誘拐の手口は「軍事作戦」のように周到だったとしている。

 ミア・モンテマジ(Mia Montemaggi)さん(8)は13日、スイス国境に近いフランスの村プリエール(Poulieres)にある祖母宅から男3人によって連れ去られた。

 仏北東部ナンシー(Nancy)の検察当局によると、大規模な捜索活動の末、ミアさんは失踪から5日後の18日、スイス・サントクロワ(Sainte-Croix)にある廃工場の敷地内で母親のロラ・モンテマジ(Lola Montemaggi)容疑者(28)と一緒にいるところを発見・保護された。この廃工場は「自治」を掲げる思想集団が無断占拠していたという。

 母親を手助けしてミアさんを誘拐したとして、23~60歳の男5人がフランス国内で逮捕され、未成年者略取容疑で予審判事の捜査対象となっている。うち4人は勾留されている。

 男らのうち3人は、児童福祉局の職員を名乗ってミアさんの母方の祖母宅を訪ね、偽造の身分証明書を見せてミアさんを引き渡すよう祖母を説得したとされる。

 この誘拐事件では暴力が振るわれることはなかったが、ナンシー検察局のフランソワ・ペラン(Francois Perain)氏は、「軍事作戦」さながらの「極めて周到に準備された」犯行だったと指摘。誘拐犯らは「リマ作戦(Operation Lima)」という作戦名さえ付けていたと述べた。

 男らはトランシーバーやキャンプ用品、複数の偽造ナンバープレート、食費などの必要経費3000ユーロ(約40万円)を所持。男3人と母親がミアさんを連れて徒歩で国境を越え、そこで別の男の運転する迎えの車に乗ると、スイスのホテルで1泊した後、サントクロワに移動した。

 男らに前科はなかったが、検察によれば全員同じ「思想集団」のメンバーだという。この集団は「反国家を掲げ、『衛生独裁政権』に対抗するため結集したと主張している」存在で、当局に保護された児童らを「親から不当に引き離された」とみなしているとペラン氏は説明した。

 ミアさんにけがはなく、健康状態も良好。精神分析医とソーシャルワーカーのケアを受けた後、祖母の家に帰るという。(c)AFP/Remy Zaka with Fabrice Coffrini in Sainte-Croix, Switzerland