【4月13日 AFP】菅義偉(Yoshihide Suga)首相は13日、東日本大震災で被災した東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所から出る100万トン以上の処理水を、海へ放出する方針を政府が正式決定したと発表した。

 放出開始は2年後以降になる見込みだが、すでに地元の漁業関係者らからは反対の声が上がり、中国・韓国は懸念を表明している。

 政府は、大部分の放射性物質を取り除いた上で希釈した水を放出するため安全だと主張している。国際原子力機関(IAEA)からも、世界各地の原発から出る汚染水の処理法と同様だとして支持を得ている。

 菅首相は、「基準をはるかに上回る安全性を確保し、政府を挙げて風評対策を徹底することを前提に、海洋放出が現実的と判断し、基本方針をとりまとめた」と述べた。

 処理水は浄化処理されているが、今回の決定が論争を巻き起こすのは確実で、水産物の信頼回復に努めてきた地元の漁業関係者らは怒りを募らせている。

 菅首相の発表に先立ち、福島県・相馬双葉漁業協同組合の立谷寛治(Kanji Tachiya)組合長はNHKの取材に対し、政府は漁業関係者の支持がなければ海には放出しないと言ったと指摘。その約束を破り、一方的に海へ放出する動きには賛同できないと語った。

 処理水の海洋放出は、正式決定の前から近隣諸国の反発を招いている。韓国外相は12日、「将来的に韓国国民の安全と周辺環境に直接的または間接的な影響を与える恐れがあり、この決定に深刻な遺憾の意を表明する」と述べた。

 中国外務省の趙立堅(Zhao Lijian)報道官も同日、処理水の海洋放出について「責任ある行動」を取るよう日本に求め、「国際的な公益および中国国民の健康と安全を守るため、中国は外交ルートを通じて日本側に重大な懸念を表明した」と述べた。

 映像前半は処理水の海洋放出決定を表明した菅首相、13日撮影。後半は処理水の貯蔵タンク、2017年撮影の資料映像。(c)AFP