【4月14日 東方新報】14億人の人口を擁する中国は、障害者大国でもある。公式統計で心身障害者の総数は8500万人に達し、実際は1億人近いともいわれる。障害者の生活保障や社会のバリアフリー化は十分とは言えない状況だが、来年は北京冬季パラリンピックが開かれることもあり、バリアフリーへの関心は高まってきている。社会を改善しようと自ら声を上げる障害者も増えてきている。

 1949年に中華人民共和国が成立した当時、長年の戦争により障害を追った軍人や市民が多くいた。翌1950年には「革命障害軍人を優遇し、補償を与える暫定施行条例」が出され、その後に中国赤十字が障害者のある従業員を優遇するよう促すなどの取り組みがあった。1988年にはすべての障害者に福祉サービスを提供するため中国障害者連合会が設立。政府は同年、初めての「障害者事業5か年活動要綱」を策定し、生活保障、リハビリテーション、就業、バリアフリーなどの目標を定めた。1990年には「障害者保障法」も成立し、障害者の権利と平等を進める枠組みを整えていった。

 ただ、実際には通学拒否や就職差別を受けるなど、障害者の権利や生活が保障されることは難しい現実がある。障害者の大半は家族に扶養されているが、障害者のいる家庭の平均年収は全国平均の半分程度で、「誰かが障害者になると家族全員が貧困になる」実態がある。このため生活苦から路上で物乞いをする障害者も少なくない。障害者の物乞いが多い都市部では、路上でマイクを持って歌を熱唱してアピールしたり、手作りの台車に乗って地下鉄の車内を巡回したりしてお金を求める障害者も見られた。

 近年は中国の経済成長に伴い、各地で障害者の扶養施設が増加。市民の収入も増え、障害者の物乞いの姿も減少した。中国では先天的な障害以外に労災事故による障害者が多いが、労働環境の改善も進んできている。

 障害者の生活がある程度安定しつつある中、最近は障害者が街に出やすいよう「社会のバリアフリー化」についての関心が高まっている。「歩道の点字ブロックが大量のレンタル自転車によってふさがれていて視覚障害者が歩きづらい」「地下鉄の車両とホームに段差があり、駅にスロープやエレベーターがないため、車いすの人が利用しづらい」「障害者用トイレが設計上の配慮が足りず、使いづらい」。こうした指摘が各地で起きている。障害者団体が街を巡回して問題点を指摘したり、車いすの人が外出先の出来事をインターネットに動画で投稿したり、当事者自らが発信する動きが増えている。

 中国では2008年に北京五輪が開かれた後、パラリンピックも行われた。外国の選手団からは「会場への道路標識が『五輪会場はこちら』から『パラリンピック会場はこちら』にちゃんと変わっている。パラリンピックへの扱いが雑だった、これまでの開催地と大違いだ」「選手村にある池が『視覚障害者にとって危ない』と伝えたら、翌日には柵を設置してくれた」と評価の声が高かった。ただ、こうした「おもてなし」の心は、中国社会自体のバリアフリー化には波及しなかった。

 2022年3月には北京冬季パラリンピックが開催される。北京市は「パラリンピック開催を機に、障害者が社会に十分に参加し、発展の果実を分かち合えるようバリアフリー化を推進する」と表明。競技会場に限らず、地下鉄やスーパー、公園、医療など多くの場所でバリアフリー化を進めるとしている。こうした流れが全国に普及していくことが期待される。(c)東方新報/AFPBB News