【4月11日 東方新報】海洋への散骨や樹木葬などの「自然葬」が中国各地で広がっている。中国では墓地用の土地が圧倒的に不足しており、地方政府は補助金も出して、墓を建てない「エコロジー葬」を推奨している。

 先月29日、浙江省(Zhejiang)温州市(Wenzhou)の海上で合同海洋葬が行われ、109組の遺族が参加した。船の上でおえつが響く中、生分解性の骨箱をひもで下ろし、遺骨を海に送った。子どもを亡くした母親は「海洋葬は環境に優しい葬儀なので選びました。子どもが旅立つ時に、土地を使う必要はありません」と涙ながらに話す。母親を見送った娘は「母は病に苦しみ、長い間入院していました。自然に帰り、やっと自由になれました」と語った。

 温州市民政局の鄭知祖(Zheng Zhizu)さんは「市はここ数年、土地節約型のエコロジー葬を積極的に推進しており、市民の意識も変わってきている」と話す。温州市が新たに設置した公立墓地は墓を建てるスペースはなく、樹木葬、花壇葬、芝生葬のための用地やロッカー式の納骨棟などを設け、「100%エコロジー葬」をうたう。遺族には5000元(約8万3400円)から8000元(約13万3500円)の補助金を提供しており、最近の葬儀の70%はエコロジー葬という。

 海のない遼寧省(Liaoning)瀋陽市(Shenyang)も省内の沿岸部の大連市(Dalian)や丹東市(Dandong)などに出向いて、海洋葬を行っている。2020年には33回実施し、遺骨2143柱を海に帰した。遺族が瀋陽市と沿岸を往復する交通費や船賃、骨箱、花束などはすべて市が負担し、さらに400元(約6670円)の補助金も支給している。翌年以降、命日に合わせ海まで慰霊に出向くことが難しい遺族のために、インターネットを使った「オンライン慰霊祭」も行っている。

 中国では、個人もしくは夫婦で新しく墓を建てるのが伝統(世界的には家族単位で墓を建てる日本のタイプが少数派)。中国は面積が広大でも平地は少なく、墓をつくる場所が限られており、政府は1997年に墓の面積を規制する「葬儀・埋葬管理条例」を公布している。しかし近年は人口が14億人に達した上、著しい経済成長に伴う土地開発も進み、土地不足により不動産価格が高騰。生きている人間の住まいを確保するためにも、土地を節約する自然葬が必要となっている。

世界一人口が多い中国は死亡者も当然多く、2019年には998万人が亡くなっている。自然葬は北京市や天津市(Tianjing)、河南省(Henan)鄭州市(Zhengzhou)など各地の大都市で奨励されており、今後も全国的に広まっていくとみられる。(c)東方新報/AFPBB News